72.追ってくる人 ページ23
.
｢……多分、あれを壊せば｣
――終わる。
私の変な体験も、父との確執も、村の未来も全て。
そう思うと何故だか怖くなった。
本当に、こんな鏡なんかを壊せば全て終わってくれるんだろうか。
見上げた柱は天高く登り、山の天井に張り付くように真珠色の肌を伸ばしていた。
私が何人居ても追いつかないくらい太い柱から発せられる淡くて怖い光を暫くぼんやりと見つめていた。
すると、背後からするりと風が撫ぜる。
｢――……A｣
｢ソクジンさん｣
多分、この神様がこんなに慌てた顔をしているのは初めて見たかもしれない。
薄く唇を開いてこちらを見据えるソクジンさんの視線は、私を通り越して背後の柱に縫い付けてある。
テヒョンとジョングクくんが警戒心を剥き出しにして私の前へ出ようとするのを、手でやんわりと止めた。
ソクジンさんから｢これは……何だ？｣という乾いた呟きが漏れる。
｢龍穴です。今からあれを、壊します｣
｢壊す……？｣
ひくりと眉根が動くのを見て、私は身体を強ばらせた。
龍穴を壊すことにソクジンさんのメリットはない。だから、敵と思われても仕方の無い宣言だった。
だけど、今ここで下手な誤魔化しが出来るほど気持ちにも思考にも余裕はなかったし、何より正直に伝えたいと思った。
神様の住処を奪う事だから。
｢どういう事かわかってるの？｣
｢はい。ここに神様が住めなくなることも、村が地図消えることも、全部わかってます｣
私がそう返すと、ソクジンさんは苦しげに顔を歪めて私を見た。
｢君はそんなに僕のものになるのが嫌だったの？｣
少しだけ、驚いた。
返ってきた返事が思ったようなものじゃなかったから。
思わず、口の端に笑みが零れる。
｢木になるのは嫌ですね｣
｢……｣
｢でも、ソクジンさんのことは、なんか……嫌いにはなれませんよ。ろくでもない記憶しかないけど｣
ソクジンさんは神様の常識で生きていて、それが私とは相容れないだけ。
父のことやファーストキスのことはまあ、思う所はあるけれど。あと、ちょっと力が強すぎて怖いし。
｢……あれ？ 嫌いじゃないのが不思議｣
｢……｣
ソクジンさんは傷ついた顔をしていた。
その表情を見ていたら、なんだか気が抜けた。
｢Aちゃん｣
ジミンさんがバタバタと森の奥から抜けてきて、私達を見て驚いた顔をしたけど、私はすぐにヒラヒラと手を振って無事を伝える。
そして、呆然としているソクジンさんの前に立った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sai(プロフ) - カナタさん» ちょっと抜けてるナムジュンめっちゃ好きで、好きが高じてこうなりました 笑 ハーレムになってからが本編です……！ (2020年4月10日 17時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - ナムジュン可愛いです(笑)求婚の貢物届けるナムジュンと知ってても教えないお父さんが(笑)ヒロインちゃん・・・イケメン神様達のハーレム羨ましい(´；ω；`) (2020年4月10日 1時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 完結までありがとうございました！ その後も読んでもらえて嬉しいです〜ジミンちゃんは許しませんよ 笑 ぼちぼち続くので、また読んでやってくださーい！ (2020年3月23日 15時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - LiLiさん» ありがとうございます〜 オチだけは決めてたので、楽しく読んでいただけて何よりです！ (2020年3月23日 15時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - 凄く面白かったです！最後はみんなで仲良く暮らせてよかったです^^テヒョンの自分だけ仲間外れ感からの第一志望に笑いました(笑)ジミンちゃん許してくれたの？(笑)お父さんしてるユンギさんも可愛いかったです！番外編などあったら是非読みたいです^^完結お疲れ様でした (2020年3月20日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月27日 10時
