四十二 ページ43
目を覚ましたのは、格子の中だった。
私はまたしても捕らわれの身らしい。
つくづく枷に好かれる体質だ、と自嘲を零す。
ただ鉄棒の向こう側には暗闇が広がっているばかりで、見張りの様な者も見当たらない。
此処が船の中なのか、どこかの星なのか。見当すらつかないのだ。
時がたっても食事が運ばれてこない所を見ると、敵は私の体質を知っているらしい。
これでは本当に脱出なんて夢のまた夢だろう。
ただ、一筋の希望といえば。
胸元に入れられた来島さんの銃くらいだ。
...といっても弾が入っいないので、本当に玩具でしかないけれど。
ひたすらに壁の汚れを眺めて過ごし、どのくらいが経っただろう。
放置されるのは慣れっこでも、あの部屋と決定的に違うのは、彼が居るか否か。
私にとってその微差が世界の価値観を左右する。
虚無のみが転がるこの空間には、何の感情も感じなかった。
「......会いたい、な。」
「え」
「え?」
零した独り言に、何故か私ではない者が情けない声を上げた。
暗闇の中からひょっこりと顔を出すその人の顔は、完全に引きつっている。
あたかも、いきなり独り言いい始めて驚いたから声あげちゃったよ、みたいな感じである。
冷や汗を流すその人は、黒髪のおとなしそうな男の子だった。
何処か気の抜けた顔をしている。
「えっいやあの、俺、怪しい者じゃないんで!ほんと!」
「はぁ。」
黒服に身を包み牢獄に侵入している時点でアウトだと、どうやら気づいていないようである。
「なんか俺がいうのも何ですけど、めっちゃ反応薄くないっすか。」
「この状態じゃ逃げる事もできませんし。あなたが敵なら私は殺される、味方なら救ってもらえる。それを受け入れることしかできませんので。」
「...まあ、そうですね。あっ、とりあえず今ので言うと俺は後者なんで安心してください!野崎家のご息女ですよね!」
若干嬉しそうに彼は胸を張っているけれど、残念ながら野崎家とやらに見覚えはない。
まさかここまで来て人違いでしたーなんて阿呆な落ちは避けたいのだけれど。
「すみません。私、Aといいます。それ以外の事はわからなくて。」
「わからない?」
「はい。忘れてしまったんです。」
眉間に皺を寄せたと思えば、今度は思いついたように胸ポケットから電子機器を取り出す。
ぱっと顔を上げて「野崎Aさん。あなたの苗字は、野崎ですよ。」と言った。
表情がころころと変わる、面白い人だ。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年5月14日 20時