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四十 ページ41

「...Aがやったんスか、これ。」

「でもあんまり強い人ではなかったですし。今どきの女の子なら、このくらい」

「いやいや普通に無理あるっスよねそれ!」

ほんの少しだけ、私に向けられる来島さんの視線が変わった気がした。
何も知らない哀れな娘ではなく、得体のしれない戦場に立つ一人の人間として、しっかりと私を捉える。

私が何者で、何をしていたのか。

その真実を知っているのは恐らく、高杉さんだけなんだろう。
同時に私を過去の呪縛から解き放てるのも彼だけだ。

ああ、こんな血なまぐさい所早く抜け出して彼に会いに行きたい。
もう部屋に戻ることが叶わぬなら、また二人で新しい世界を見つけに行けばいい。

煙を上げる銃口に息を吹きかけて、そんな事を思った。


「でも私も少しは戦えるみたいですし、案外逃げ切れるかもしれないですね!そうしたら応援も呼べて高杉さんにもきっとッ」


――会えますよね。

確かにそう言ったはずが、実際に口から洩れたのは音の宿っていない空気だった。
自身の力に動揺し、話題転嫁に夢中になっていた私は背後からの物音に気付けなかったのだ。


「A!!」


後頭部に走る鈍痛。
陶器の様なもので背後から襲われたようだった。

強い衝撃に耐えられず、そのまま地に倒れ込む。

朦朧とする視界の中で勝ち誇ったような笑みを浮かべるのは、先ほどまで来島さんと戦闘していたあの天人だった。
…両腕に弾丸の後がある。
全身を負傷しながらも、その目は鋭利な刃物の様に明確な殺意を向けてきた。

「ッ!」

咄嗟に銃を構え、トリガーを引く。
しかしいくら撃っても直前の戦闘で弾の総点数はぜろ。
ただ鉄の玩具で無様に抗おうとする私だけが、天人の瞳に映り込んでいた。

「クソッ!まだ生きてたんスか!!」

来島さんの叫び声が聞こえるけれど、先ほどの打撲のせいで意識をはっきりと保っていられない。
脳震盪でも起こしたのだろうか。
徐々にぼやけはじめる視界と、遠のく銃声。

混濁した思考の海に沈むみたいに、足掻いても足掻いても私の身体はいう事を聞いてくれなかった。



高杉晋助。
私はあなたの名前しか知らない。

祭りが好きで、三味線が弾けて。
時々怖いくらいに甘やかしてくれる事。

あの部屋で知りえた彼は、たったのこれだけだった。



部屋から出てしまった今、
私は何を手繰って彼に会いに行けばいいのだろう。




高杉さんのくれた鈴は、荒らされてしまったあの部屋に置いてきたままだ。




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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年5月14日 20時

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