【銀魂】高杉さんに閉じ込められた部屋でのお話

二十七 ページ27

｢初期から深く携わっていたんだ、新政府にとって都合の悪い話の一つや二つ知っていても不思議じゃあない。｣

｢それに野心むき出しのそんなヤツら、権力持たせて近く置いといたら次噛みつかれんのは自分らだってことぐらい、幕府の連中もわかってたんだろ。｣

室内で容赦なく土方さんが蒸したタバコの煙が鬱陶しくまとわりついてくる。
....受動喫煙って知らねえのかこの野郎。


｢当主と幹部らは晒し首だったが、親族は正式な刑には処されず何者かに襲撃を受けて死んだらしい。....だが1人出てきたんだよ、最近。｣

｢化けて？｣

｢幽霊なら職務外でこっちとしても嬉しいが、そうもいかねえんだこれが。当主の一人娘だよ。裕福な家庭で育った箱入り娘が最近ひょっこり現れた。｣

現れた、といっても幕府でその姿を確認した人はいないらしい。
ただ、近頃その名前だけが噂の中でちらほらと上がっているのだという。


｢話じゃ、その娘が幕府のやばい話を握ってるとかで天人共に追われているらしい。」

｢んなの根も葉もねぇ噂かもそれねぇじゃねえですかぃ。いちいち本気にしてちゃ身が持たねーや。｣

｢最初は俺達もそう思ってたさ。だがそれにしちゃ賊の連中が本格的に動きすぎてやがる。｣


娘が生きている可能性は限りなく低いだろうが、生きていないと言いきれる保証も同時になかった。
それに何者か(誰がどう聞いても幕府が一枚かんでいることは明白だが)に襲撃を受けた、というのであればかなりの乱戦となったのだろう。

小娘1匹取り逃がすことくらい、できるかもしれない。

そんな薄い可能性すらも早期につんでおこうと行動を起こすなんて、幕府の連中はよほど過去のことをほじ繰り返されたくないようだ。


｢といっても総悟の言う通り確固たる証拠がある訳じゃあないからな。上からは安否確認と可能であれば保護、くらいにしか言われてなかった。｣

｢......かった？｣



敢えて過去形を強調すれば、腕を組み近藤さんが大きく頷く。



｢この間の下っ端が"その娘なら過激派攘夷浪士の手の中にある"と言い始めてな。上は大慌てだ。」

「で、俺たちにその娘の暗殺命令でも出たってんですかぃ。」

「攘夷浪士との関係が疑われているから一旦は逮捕って形にはなるが、その後どうなるかは俺にもわからねえな。」

どう考えてもその娘はこちらに捕まれば尋問のあと殺されるだろう。
結果は明白だった。









｢で、だ。俺達はその娘逮捕...いや奪還を行う。｣

二十八→←二十六

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す