二十二 ページ22
「高杉さん。私、金魚を飼ってみたいです。」
他愛もない会話を交わす中で久々の来訪に浮かれていた私は、一つ我が儘を言ってみた。
断片的に蘇る記憶。
鱗一枚一枚に光を宿した金魚たちは、冷たい水の中を悠々と泳いでいて。
透き通るようでいて幻想的な感覚。
水色のプラスチックに閉じ込められていてもなお、彼らは仮初の自由の中でそれを満喫していて。
私もあんな風になりたいと思った。
―――そして私は彼らを掬ったのだ。
夢と言うにはあまりに現実味を帯びている。
もう一度あの姿をこの目で見たいと思った。
水の中で跳ねる姿を、あの幻を、高杉さんにも見せたいと思ったのだ。
「飼つってもここじゃ難しいだろ。第一、世話の一つもできねえ状態の奴が何言ってやがる。」
「それはそうですけど、餌ぐらいはやれます。....色は赤がいいんです。とびっきり真っ赤なやつ。」
「人の話を聞け。」
黒い出目金とかも好きなんですけどね、と付け足せば、呆れを見せながらもまんざらでもなさそうな顔をしている。
金魚なんだから金色をした奴もなかなかだろ。なんて言ってくれる辺り、高杉さんも金魚は嫌いじゃないのかもしれない。高杉さんが金魚を愛でる姿は絵になり過ぎていて、一度お目にかかりたいものだと思った。
二度目のキスをして以来、一度もあの小瓶を持ってこない。
高杉さんの言った通りあれは強制的に睡眠をとらせる”気休め"に過ぎなかったのだろう。
最近ずっと調子がいい私に比べて、前に部屋に来た男の人が言っていた通り不調そうに見える高杉さん。今も部屋に入ってきたばかりの時は難しい顔をしていて、ただでさえ冷たい雰囲気を纏う彼を一層近寄りがたく感じた。
けれど会話をしていくうちに、まるで緊張がほぐれたようにほんの少しだけ楽しそうにしている。
これはきっと多くないにせよ私が高杉さんに影響を与えられているという事であって。つい頬が緩んでしまうのだ。
こんな緩やかな時間がいつまでも続けばいいと、切に感じる。
「A、俺が来ない間の体調はどうだった？」
「見ての通りです。とても調子がいいんです。」
「…そうか。」
「そういう高杉さんこそ最近疲れていませんか？」
「俺が、か？」
んなこたぁねえ気のせいだ、と誤魔化される。
キスをしてから体感的に言えばかなり経っているはずだから、私のせいでどれだけ高杉さんが不調であったかを知ることはできないのだ。
それはとても、もどかしかった。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (
レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ！ (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね？………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします！すごくすごくおもしろいです！これからもがんばってください！ぜひ、応援させてください！ (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しののめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年5月14日 20時
