六 ページ6
とは言っても、記憶が無いので何も語れない。
あまり迂闊な質問もできない。
「お話というか、高杉さんのこと知りたいです。」
てっきりうまくかわされるかと思いきや、高杉さんは考えた風に顎に手を当て、横を向いた。
いつの間にか彼は私のすぐ側に腰を下ろしている。
「.........A、花火。わかるか?」
Aとは私のことだろうか。
初めて聞くはずのその名は、違和感なく胸にすとん、と収まる。
「火薬で咲く花、ですよね。」
脳内で再生されるのは、色とりどりの光。
背景は都会に星を消された夜空で、夏を象徴するような快活な音と共にテンポよく打ち上がる。
季節特有の湿気と人々の息遣い。
雑踏の中での記憶。
私は、真っ赤に咲くあの1番大きな花火が好きだった。
重度の記憶喪失では無いようだ。
ものの名前や生活の仕方は覚えている。
....ただ、今見た景色は、それとは別の。
忘却の1片だろうか。
「まだ早えが、そろそろそんな時期だ。」
「初夏なんですね。」
「ああ。」
「なら、紫陽花はもう咲いているでしょうか。」
「....どうだろうな。」
「葵やクチナシもあと少しで咲きますね。」
「今のご時世、季節なんか関係なく花はいくらでも手に入る。」
「...わかってないですね高杉さん。私は夏に向日葵を見て、春に桜が見たいんです。」
そんな話をこの部屋でするのは、なんとも残酷だった。
378人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年5月14日 20時