四十七 ページ49
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「――――おい、起きろ。」
知らない声がして、目が覚めた。
眠らない筈の私が"目を覚ました"のだ。
朦朧とした意識を引きずって何とか焦点を合わせるも、視界は歪にゆがみきっている。角膜が正しい輪郭線を選び出すまでに、数秒を要した。
周囲の些細な音が骨まで響くように、強い衝撃となって襲い掛かってくる。
酷い頭痛と目眩。
重力が何倍にも膨れ上がったみたいな倦怠感も伴い、一言でいえば、ありえないほどに体調が悪かった。
「ッ!」
「あー、あんま動かねぇ方がいいぞ。」
むき出しのコンクリートで四方八方塞がれた部屋には、同じ灰色の机が一つ。
私の向かいに座る美しい相貌の男は、鞭の様な攻撃性を孕んだ声を出した。情という言葉を知らないかのような、容赦ない響き。
黒髪の彼は、机の上の灰皿に口元の煙草を押し付けた。
変わらず手錠で自由を奪われた私は、顔面に吹きかけられた煙を払う事すらできない。
「しっかしてめぇも災難だったな。まさかここまできて白たァ。」
「.........な、に...が、です?」
乾ききった喉は、上手く音を発しない。
今まで以上に訳が分からない状況に混乱するも、目の前の男は到底答えをくれそうにはなかった。
すると突然、背後で扉の閉まる音がする。
「土方さん。どうですかィ?いい加減その女、吐きやした?」
「てめぇ...総悟、何処行ってやがった。お前が担当っつー話になったんだろ。仕事しろ仕事。」
「細けぇこと言わねぇで下せェ。わざわざ島まで言ってとっつ構えてきた俺へのねぎらいってもんはねーんですかィ。」
例の栗毛の隊長さんは、ソーダのアイスキャンディを舐めながら姿を現した。殺風景な部屋とは何とも不釣り合いだ。
確か保護とか言ってませんでしたか、と掴みかかってやりたいのは山々だったけれど、そんな権利も気力もない私はただ黙ってその光景を眺めている。
隊長さんはテーブルの上に広げられた注射器を見て、楽しそうに笑った。
「うーわ土方さんほんと容赦ねーや。この自白剤の量。おっかねー。」
「....状況からすりゃ、百パーセント真っ黒な人間だと思うだろ。」
「っつーことは、まさかここまでして無関係だったってことですかィ?」
勝手に進む会話についていけず、目の前の机に倒れ込む。
今はただ身体を休めたかった。
―――あの部屋に戻りたい。
ただそれだけを想って懸命に息をする。
高杉さんは今、何をしているのだろう。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年5月14日 20時