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四十四 ページ45

牢からの抜け道を這って出た後、窓のある廊下に出た。
煌々と光を宿す月は、こちらの気も知らないでただ平等に辺りを照らしている。

「あれ、月がある。」

「もうすっかり夜になっちゃいましたからね。」

「いえそうじゃなくて。ここ...もしかして地球ですか?」

「?そうですよ。っていってもまあ、日本列島ではないんだけど。」

それはいったいどういう意味だろう。
もう一度山崎さんに尋ねようとするも、突如廊下に轟いた爆音によって遮られてしまった。
瓦礫の破片と土煙が私たちを襲う。


「えっちょっと!まさか隊長達もう突撃してきたんじゃ!」

「お仲間ですか?」

「仲間ではありますけど、ある意味敵より厄介というか危険な人です!!逃げましょう!」

「えっちょっ」


急に着物を引っ張られて、全力疾走する山崎さんの後を追う。
一瞬で血の気が引いたところを見るとそのお仲間さんとやらは、相当不味い人物らしい。

背後からは立て続けに破壊音がする。

どう考えても武士が刀を交える時の音ではない。
何か、火薬がはじけてコンクリートが粉砕するような。


「おいっそこのお前ら、止まれ!」

「この女...脱走者だ!!チッ真選組の奴ら、もう手をまわしてあったってか。」


後ろばかりに意識を飛ばしていたせいで、反応に後れを取ってしまう。
前方を向けばちょんまげ頭に刀を引っ提げた侍が三人、その鞘に手を掛けていた。
姿かたちが人間とは言えど、どうやら私を誘拐した天人共と同じ家中の者であるようだ。


「あーーあんな騒ぎ起こすから!!あの馬鹿っ!!」

「誰が馬鹿だって?」


混乱を極める山崎さんの叫び声に、背後から応答があった。
振り返った山崎さんは「ヒッ」と短い悲鳴を上げて、手が震えはじめる。
何やら重い金属を引きずるような音が徐々に近づいてくるのが分かった。


「た、た、た、隊長!!!」


隊長。
そう呼ばれた彼は、バズーカをぶら下げ、山崎さんと同じ隊服に身を包んでいる。
真っ赤な瞳に掛かる栗毛を鬱陶しそうによける仕草でさえ、その整った目鼻のせいで様になって見えた。
この場に似つかわしくない甘い顔立ちだ。

けれど、通る道全てを破壊し尽くす少年はとても正気とは思えなかった。


「おーい山崎。人の悪口言うんなら周囲を確認してからするこったな。」

「いや全然隊長の事なんて言ってないですよ!ただちょっと攘夷浪士どもうるせぇなーと思っただけですって!」


どうやら山崎さんは嘘が下手みたいだ。

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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年5月14日 20時

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