三十四 ページ35
頭をわしゃわしゃと撫で回してやると、｢やめてくださいー｣と腑抜けた声を出した。
艶やかな髪が乱れ、絡まる。
そういえば随分と長くAが髪を切ったところを見ていない。
ここから出て歩き回るのなら、腰よりも長いあの髪は邪魔になるんだろう。
まるでこの足枷の様に。
自らの足を取られて転んでしまう。
こいつらはきっとAをここに留めて置くための一要素となってくれるのだ。
｢いい子にしてたら、な。｣
誰かを抱きしめる暖かな腕など、とうの昔に無くした。
刃を握った瞬間から、世界を憎んだあの時から、この手は何かを壊すことしか出来ないのだと悟ったのだ。
けれどこいつが望むのなら、
血染めの両腕で抱きしめてやろうと思った。
とうの昔に汚れきった体同士、その体温を分け合うのも悪くない。
すればAは満足げに笑う。
｢約束ですよ。｣
多分こいつが敢えて今抱きしめて欲しいと言わないのは、抱きしめること自体に意味があるからじゃない。
約束をして次会える確信を得たいのだ。
そうして明日も息をする理由を手繰っている。
そのAの頼みは、俺を満たすにあまりに十分だった。
・
・
・
ついこの間の話。
金魚は何処に住んでいるのか？と高杉さんに尋ねると、「おめぇは馬鹿か。」と心底呆れた顔をされた。
いやだって、池で天然金魚が泳いでいるところを見たことがないから。
｢金魚ってのは人為的に作り出した生き物だ。突然変異したフナが元らしいが、自然界に存在しねぇ魚なんだよ。｣
｢ええ....そんな。」
｢日本の池にゃあんなぎらついた目立つ魚、そうそういねえだろ。すぐ鳥にでも食われちまう。｣
言われてみればそうだ。
池の中なら周囲と保護色である方が生存率は高い。
....なら、夏祭りで輝く彼らは、始めから水槽の中にしか居場所がないのか。
ほとんどのものが狭い空間の中で観賞用に飼育されるためだけに生まれてくる。
その短い生涯を小さな四角形の中しか知らずに閉じるのだ。
｢金魚たちは、水槽の外へ出ても生きていけるんでしょうか。｣
私は広い世界など知らなくていいから、高杉さんがいにこの部屋に留まりたいと願う。
なら金魚たちはどうだろ。
壮大な自然界で伸び伸びと生きていくより、安全の保証された水槽の中を選ぶんだろうか？
｢..........さあな。｣
金魚たちは泡を吐くばかりで、答えてくれそうにない。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (
レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ！ (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね？………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします！すごくすごくおもしろいです！これからもがんばってください！ぜひ、応援させてください！ (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しののめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年5月14日 20時
