11.案外普通の日々 ページ11
.
その日の夜は悪夢を見た。というか、多分体が変化していたんだと思う。
変な生き物に体中を齧られる夢で、私は悲鳴も上げずにじっと堪えているだけだった。
朝起きて、悪夢の余韻にげんなりしながら鏡を見ると、明らかな変化に目を見開いた。
｢毛穴が……ない｣
肌がとにかく綺麗になっていた。ニキビも消えたし、毛穴も締まってトゥルットゥルだった。
髪も梳かすなりキューティクルが天使の輪みたいになって、自分の肉体に変化が起こっていることを何となく実感した。
こうして吸血鬼はエサを探す為に綺麗になるらしい。嬉しいんだか悲しいんだか、よく分からない不思議な気分だった。
｢――おはよ｣
｢おはよ〜！！！！｣
クラスメイトは私とテヒョンが一緒に居ても別に何とも思わない(ようにテヒョンがしている)。
半吸血鬼になってからというもの、この二週間はテヒョンが毎日ベッタリと私に張り付いていた。
授業中もチラチラこっちを見てはニコッと笑うので、なんか大型犬を飼ってるような気分。
｢おーいキム・テヒョン！ 宿題の問二の答えは？！｣
｢せんせ、俺宿題やり忘れちゃった｣
こてっとテヒョンが首を傾げると、先生は仕方ないなあ〜じゃあ後ろの席のやつ！と答えを哀れな後ろの席に回したけど、よくよく考えてみればこれも魅了のなせる技なんだろう。
ほんとに上手く吸血鬼の能力使ってるなあ……他の人が宿題忘れてたら普通に怒られてるわ。今までこれがテヒョンのキャラだと思って当たり前にスルーしてたから忘れてた。
そう考えると、この日常って怖いなあ。昔から妖怪やら魔物が怖がられている理由がなんとなく分かった。
みんなもこんな風に自分の意識がコントロールされてるなんて思ってもいないんだろう。
｢A、A｣
｢ん？｣
｢今日は昼休み、一緒に居てくれる？｣
教科書で顔を隠すようにしてテヒョンがこちらに小声で話しかけてくる。
｢え〜、私本読みたいんだけど｣
｢じゃあ、俺も一緒に行く｣
｢静かにしてるって約束するなら｣
｢うん！｣
……ほんとかな〜。このやり取りをして、私が昼休みをめいいっぱい読書に使えた試しがない。
まあ、不死になったので読書の時間なんかこれから持て余すほどあるんだろうけど。
――吸血鬼としての生活は危険だって言われてたけど、学校にいるうちは案外普通に暮らせるんだなあ
ぼんやりと窓の外の青空を見上げて、あと五分後にやってくる昼休みをちょっとだけ待ち遠しく感じてみたり。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 699人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント＆読了ありがとうございますー！ 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです！楽しみにしています！ (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす！その後の進展(？)した二人も書きますね〜！読んでくださってありがとうございました！ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分（他メンのエピソードとか）色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜！ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜！完結しましたね！今回は推しということもあり楽しませていただきました！続編、見たいです！！基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年8月29日 11時
