08.火の玉ストレート ページ8
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ジョングクくん、いい人だったなあ、と思わぬ出会いに微笑みが零れそうになったけど、家の門のような構えの傍にぼんやりとした様子のユンギさんが立っていたので顔が強ばった。
ふと、頭を過ぎったのは、マンションのベランダでタバコをふかしていた父の横顔だった。
｢――……どうしたんだ、それ｣
｢役場に行く途中で雨に降られて｣
私がそう返すと、何とも言えなさそうな表情でユンギさんは肩を竦めた。ずぶ濡れの私は確かに見ようによっては大惨事だと思う。
その横を通り過ぎて家に入ろうとすると、何故か後ろを着いてこられてびっくりする。
｢……なんですか｣
｢いや、風呂。流石に風邪引くだろ｣
｢……あ、ありがとう、ございます｣
静かな部屋でストーブに当たっていると、お風呂を沸かしてくれたのかユンギさんは戻ってきた。
｢役場には着けたのか？｣
｢なんとか｣
｢……誰にも会わなかったか？｣
……ん？
｢えっと、会いましたよ。道に迷ってたら、同じ中学の後輩が通りかかって、連れてって貰いました｣
変な質問だと思ったけど、とりあえず聞かれた事だけ答えてみるとユンギさんは気が済んだらしい。黙りこくった。
沈黙が広がる。
ゴウゴウと音を立てるストーブに手を当てるフリをしながら、なんとも気まずい雰囲気がなんとかならないか、少しだけ考えてみた。
｢ユンギさんって、ここで何してるんですか？｣
｢あ？｣
｢いや、お客さんだって聞いたけど、なんでずっと家に居るのかなって｣
まあ、正直言えばニートですか？ という意味だったけれど、流石に直球でそれは聞けない。
床の方に視線を落として座っていたユンギさんは視線だけをこちらに向けて瞬きした。
｢……ここに居るのが仕事……的な｣
｢えっと、聞いたらアレですけど、病気？｣
｢いや……まあ、でも、そんなもんか｣
曖昧に言い淀むユンギさんにこれ以上深く聞くようなことも出来ず、再度黙る。
無口な人と話すと、こういう風に気まずくなるから変に会話なんかしない方がいいと分かっているのに。
モヤモヤしている内にお風呂が沸いたのか場違いな機械音声が｢お風呂が沸きました♪｣と言った。
｢とりあえず風呂入ってこいよ｣
｢はあい｣
モソモソと立ち上がって部屋を出る。
(ユンギさんは病気……かもしれないし、ニートかもしれない)
というか、多分ニート。はぐらかされたし。
下手に聞いたせいで逆に謎が深まってしまった感があるのは仕方のないことである。
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sai(プロフ) - fanさん» コメントありがとうございます 文脈とかはあんまり考えてないんですけど、読みやすかったら何よりです^^* 楽しんでください〜 (2020年2月29日 13時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
fan(プロフ) - コメント失礼します。まだ数話しか読んでいないのですがとても文脈がしっかりしていて読みやすく楽しい作品だなと思いました。 (2020年2月27日 16時) (レス) id: b1b69e3863 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 番シリーズから！ありがとうございます！ 今回も全員総出演で不穏面白く書きたいと思いますー 完結まで楽しんでください〜 (2020年2月14日 21時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - はじめましてです^^ 番シリーズから飛ばせていただきました！題名から田舎でのんびり系かと思いきやファンタジーな内容にハラハラしながら読ませていただきました！ま未だ出ていないメンバーもいまし今後も更新楽しみにお待ちしてます！ (2020年2月14日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はじめましてさん» こちらこそありがとうございます〜 ほんと好きなように書いてるんで、好みに合って嬉しいです^^ これからも好きに書くので、気が向いたら読んでやってください！ (2020年2月11日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月5日 13時
