無口な彼女_9 [hiromitsu.k]

Chapter400 ページ19

宏光「・・・。」



　
　
　

　
　




宏光くんは何も言わず
私に向けていた体を戻して
前を向くと顔も体も深く下げた









・









・







しばらく沈黙が続いて
宏光くんが椅子から降りるように
その場にしゃがみ込むと
残っていた線香花火に火をつけた









私は黙ってそんな宏光くんの
背中を見ることしか出来ず









空気の澄んだ静かな夜に
パチパチと響く線香花火の音
再び鼻に届いた線香花火の匂いが
さっきとはまるで違うものに感じてた









音が大きくなって
静かになって
何も聞こえなくなって









・









・









宏光「正直さ・・・」









宏光「Aが

書けなくなってる事を知って

・・・もしかしたら

こんな日が来るかもしれない

って考えた事もあったんだよね」









宏光「あ、Aの事を

信用してなかったとか

そういう事じゃなくて

ただ漠然と、っていうか

決断を迫られた時にAは

どうするのかなって・・・」









宏光「その時は

俺は、そんなAに

何を言うんだろうって・・・」









A「・・・。」









宏光「繋ぎ止める言葉も探したし

ここじゃなくて

２人で環境変えてみるのもありかなとか」









宏光「でも・・・」
　
　
　









宏光「実際に言われると、、、」




　
　
　
　
　
　


　
　






宏光「簡単には

引き止められないもんだな」









・・・。









宏光「他に好きな人が出来たとか

好きじゃなくなったとか

俺のここが嫌だからとかじゃなくて

そういう理由なら

いくらでも見つかりそうな言葉も・・・」









宏光「情けない事に

Aを引き止められる言葉が

見つからねーわ・・・」









そう切ない顔で笑うと
宏光くんはまた
線香花火に火をつけた









・・・。









同じように今度は
宏光くんの隣にしゃがんで
線香花火に火をつける








残り数本の線香花火が
終わるまでが
私と宏光くんと過ごせる
時間なんだろうなって考えると









火をつけた線香花火の
火種が落ちる事が
怖くて余計に手が震えた









少し前までは
宏光くんと過ごす来年の夏が
待ち遠しくて仕方なかったはずなのに

今は隣にいる１分１秒が
どうにもこうにも愛おしくてたまらない









宏光「俺、、、

今日、面接の結果聞きに

来たつもりだったんだけどなー・・・」

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