無口な彼女_9 [hiromitsu.k]

Chapter410 ページ29

私が洗ったお風呂に入って
私が洗濯したパジャマに着替えて
私が洗濯してアイロンかけた服を着て
時には私の作ったお弁当持って
仕事に行くようになったせいか
何も言わなくなった





結局、あの日以来
マルが定期的に家に行って
簡単な掃除と必要な物を
持ってきてくれるようになり
私は外に一歩も出ない毎日だったけど
それ自体は全然苦ではなかった

外の空気を吸うのは
掃除の時に窓を開けて換気する時だけで
十分気分転換になるし

どんなに大雨でも
雲一つない快晴でも
私にとってはどんより暗い曇り空だし

今日が月曜日でも土曜日でも
曜日という概念は
もはやゴミの日を把握する為だけにあって
いつもと同じ２４時間に変わりない






トレードマークだった
ボーダーのカットソーとベレー帽は
マルから借りた
くったくたのライブＴシャツと
使用感たっぷりのジャージに
もこもこパーカーが私の定番になり




一人でいる時は家事をするか
静かな部屋でゴロゴロしながら
時々スマホでマルに
教えてもらったゲームしてみたり





地上３２階から降りてきて
２階建てのアパートの一室で
廃人と呼ばれても仕方ない
生活を送っていた




そんな私をみかねて
マルが買って来たのは
分厚いメモ帳とペン

思いついたアイデアを
書き留めれる用にという
意図はちゃんと汲み取ったけれど

今現在の使い道は
マルへの買ってきて欲しいものや
お願いしたい事を書く
メモ帳らしい使い方しかしていない



っていうのがざっくりとした
あの日から１か月の流れ









・・・。








宏光くんの事は・・・









当然のように
思い出さない日はなかったけれど






家に帰ってないせいなのか
そこまで気持ちが揺さぶられる事はなく

でもある日

いつもなら私の家から何かを見つけては
楽しそうに帰ってくるマルが
何一つ持って帰って来ず
表情も暗いマルにどうしたのかを尋ねると









マルは少し言いづらそうに







『みっくん、、、

多分、、、隣から、、、』









その言葉の続きを察して
私はただ頷いて受け入れた









その日の夜









こういう日が
遅かれ早かれ来るのはわかっていたし
その日がもう終わっているのか
まだなのかもわからないよりも
よかったのかもしれない

そんな事を考えながら
マルの寝息だけが聞こえる部屋で
スマホの画面に表示された
宏光くんの名前と向き合うこと数分









『削除』を選んで
宏光くんとの繋がりを消した

Chapter411→←Chapter409

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す