無口な彼女 [hiromitsu.k]

Chapter11 ひゅーん ページ12

それからしばらく









彼の気配を感じる事はなかった









しかし・・・・・









私に訪れた不運。









嫌でも話さなきゃいけなくなった








大ピンチ！
ノーアウト満塁状態！









３月も中旬を過ぎ
その日は２０度を超える
ぽかぽか陽気で
外では桜の開花が始まった








朝からベランダの掃除をして








久しぶりに広げたパラソルの下で









お昼ごはんを食べて









ダラダラして









夕方から書き始めた小説









このマンションに決めた理由の一つに
このバルコニーもあった







普段外に出ない私にとっては
重要な場所で
特に春と秋は
バルコニーで小説を書く事も多い








割りと大きめのバルコニーの
右端にパラソル付きのテーブルと
椅子を置いて作った空間









そこで書き始めた小説









主人公は
ためらいながら指輪を外す








・・・指輪を掴むとしたら
親指と・・・








自分の右手薬指にハマった指輪に
手をかけ描写を考える








うーん・・・・







あれ？







取れない？









久しく取っていなかった気がする









浮腫？








太った？









んーーっ








なんでーーー








指輪回しながら格闘








んーーーーーーーーーっ









スポッ









ヒューン







あーーーーっ！









コロコロコロコロ








ストーーップ！









そんな願いも虚しく








隣の家とのパーテーションの下を
全く止まる気配もなく
吸い込まれるように転がっていった









嘘でしょ！！








立ち上がって椅子を避け









すぐに地面に四つん這いになり
パーテーション下を覗き込む









夢中になりすぎて気づけば
すっかり日は沈み
私の部屋のリビングの明かりだけで
バルコニーが照らされている状態









視線の先には広がる闇









部屋に戻り懐中電灯を持って
もう一回覗き込む







・・・・・んー







どこだろう？








・・・・・！









あーーー！あそこにあるーーー！








はっきりは見えないけど








懐中電灯の光に反射して









一瞬光った指輪








ベランダに置かれた







デッキチェアらしき脚の
横に転がっていた









体勢を戻す









「緊急の際はこの壁を破って」








目の前にある説明書きを
思わず読み上げた








・・・ダメダメ。









・・・・どうしよう

Chapter12 指輪奪還大作戦→←Chapter10 修羅場を抜けて

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す