好きって言わない ［yuta_t］

Chapter41 音色 ページ42

大学１年生。夏。









大学までの電車から見える景色も
乗り換えの駅にも
広いキャンパスにも
少しずつ慣れ始めた頃









授業の合間に食堂や外のベンチで
誰かと話していると
自然に集まってくる新しい友達
時々サークルで会う別キャンパスの先輩達









いつも誰かが笑わせてくれて
全部が新鮮で









こうやって裕太を
忘れていくんだなー
そんな風にさえ思ってた









アルバイトは特に
覚える事もなかったけれど









想像以上にお客さんが来なく
その時間の過ごし方が一番大変だった









勉強しながらとは思ってたけど
毎日勉強する程ガリ勉ではないし
何回かチャレンジしたけど
いつお客さんドアを開けて入ってくるのかと
考えるととてもじゃないけど集中出来ない









時々、急なゲリラ豪雨にうたれて
飛び込んでくる新規のお客さんも
お店のドアを開けた途端に
人の少なさにギョッとした顔を浮かべ









それでも引くに引けず
コーヒーを注文して
私しかいないこの空気感に落ち着かず
雨が止んだと同時に
足早に店を出ていくなんて事もあった








最初は私のせいかもと思い
お客さんが１人の時は
無駄に食器を拭いてみたりしてみたけど
効果はあまりなかった









帰り際に相談した純子ママは
この時間帯は来る方が珍しいからと
笑って答える・・・









そこまでして店を開け続ける理由は
あえて聞かなかった









そんなお店にも少しずつ馴れはじめ
お客さんがいない時間は
今後の勉強という名のもとに
大好きな雑誌を読み漁って過ごしていた









このジャーナルのパンツ
やっぱりほしいなぁー・・・









あっ・・・
でもこのバッグも欲しい









♪〜カランカラン








お店のドアに
取り付けられたベルが鳴って









慌てて雑誌を閉じ
カウンターの椅子から立ち上がり









A「いらっしゃいませー」









笑顔を作りドアの方へ向けて挨拶









でもその笑顔はすぐに消えた









キャップを目深に被って
こっちを見る









半年振りに会う裕太だった









裕太「ババアに聞いた」









キャップを取りながら
店の真ん中のテーブル席に座った裕太









・・・。









いつものようにカウンターに
置いてあるポットから水を注ぎ
メニューを持って
裕太の前のテーブル置いた

Chapter42 接客→←Chapter40 変わらないもの

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す