自問 ページ41
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「ああ、そうだよ。俺ァお前の言うとおり最低なクズ野郎かのしれねぇ。だがな―――お前に言うことは何もねえんだよ。」
いつか、あいつが言っていた。『銀ちゃんと土方さんは似ているんですよ』と。
そういわれるのは初めてではなかったが、到底俺には理解のできない感想だと思っていた。
余りにも癪な話だが、今ならその意味がほんの少しだけわかる気がする。
こいつも、俺も。
やってることは何も変らねぇ。
何も守れないまま、死体の様に純白に包まれたAの名を呼ぶことしかできない。
「俺達は肝心な物なんて一つも見えちゃいなかっただろ。同じ穴の貉が説教しようだなんて百年早ェんだよ。」
「一緒にすんな。」
「...いい加減駄々こねんのもやめろ。あいつがこんな結末、本当に望んでると思ってんのか!?一生管に繋がれて、胃ろうと人為的な呼吸で身体だけが残るなんざ.....虚しいだけだろ?」
世の中には様々な選択をする人がいる。
何時か息を吹き返すかもしれないという淡い期待にしがみついて、形だけでも残しておきたいと願うのだ。遺族であれば、ある意味当然であるともいえる。
もう一度微笑んでくれる日を迎えるために、冷たくなった手を握って祈り続けることを、希望と呼ぶのだ。それが最善である、と。
―――だが俺はそうは思わない。
こんな抜け殻にいったいどれほどの価値がある?
思考しないそれは、単なる幻想に過ぎない。夢を見るための妄想代としては、支払う代償が大きすぎるのだ。
それが正しいなんて言わない。
ただ、あいつが望むようにするべきだと思った。
やっと。
あの電話の意味を知る。
「.....この病院を用意した奴は誰だ?こいつを、こんな状態にさせたのは誰だ?」
「わかってんだろ、もう。」
以前Aが両親の話をした時、"下の者"と言っていた。
明らかに一般家庭で育ったような口調ではなかったのは確かだ。
賊同然の天人を動かし、即座にこんな設備を整えられるとしたら、Aの家の者以外に考えられない。
「組織の後を継ぐ奴が、Aだけだって話だ。要するに他の奴はAにまで死なれちゃ困るってことなんだろうよ。あいつらが生かしておきたいのは...こいつの血だ。」
恐らくこいつは、一から十まで事情を熟知してしまったのだろう。
Aが必死で隠そうとしていた真実を。
もし目を覚ましたとして、俺はいったい、あいつになんて言葉をかけてやればいいのかわからない。
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年6月10日 21時