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菓子 ページ28

しばらく男の子の親を探すべく周囲を歩いてみたけれど、それらしき人影を見つけることはできなかった。なんにせよこの人混みである。入園していればスタッフの方にアナウンスして貰えただろうけれど、まだゲートをくぐっていない状態ではどうしようもない。
泣きじゃくる男の子の手を引いて歩く私と、その後ろで一緒に探してくれる土方さん。
なんだか異様な絵図らだけれど、このハプニング、意外と楽しんでいる自分が居ることに気が付いた。

「見つかんねぇな。一旦元来た方にでも戻ってみるか?」

「そうしましょう。」

この子の親も今頃必死になって探している所だろう。入場時にチケットの枚数から居ない事には気づくだろうし、可能性が高いのは元来た道の方だ。
男の子は相変わらず全力で泣きじゃくっている。

「僕、もうすぐお母さんに会えるからね。それまで我慢しよ?ね?」

「やーーだぁ!!ママ何処行っちゃったの!」

泣き叫びながらぬいぐるみを握りしめるその手は、とても心細そうで。たった今あったばかりの私では抱きしめてあげることすらできなくて、そのもどかしさに目尻を下げた。
知らない大人に囲まれて、人ごみを一人彷徨い歩くなんて。あまり想像したくもない。

「土方さん!ちょっとあそこのお店寄りましょう。」

「あそこって...アイスクリームか?」

道の脇に建てられた青いのぼりを指さすと、土方さんもその意味を理解したようだった。
まだ開園してそれほど立っていないお蔭か、並んでいる人は少ない。

「俺が買ってくる。ガキとちょっと待ってろ。」

「すみません、ありがとうございます。」

お言葉に甘えて隅の花壇に腰をおろし、男の子を隣に座らせる。
大きな茶色い瞳が涙にぬれて、とても綺麗だった。上目づかいで見つめられてしまっては泣いたまま放置することはとてもできない。

「ねえ、アイスクリームは好き?」

「.....あいすくりーむ?」

ぴたりと動きを止め、露骨なまでの反応を見せる男の子。
これは完全に読みが当ったみたいだ。

「そう。バニラにイチゴにチョコレート。どれがいいかな?」

「いちご!」

「そっか!お姉さんも苺大好きだな。」

よーし頼みます土方さん苺を買ってきてください!!と内心懇願しながら、何とか男の子の機嫌を取ろうと躍起になる。

「そのくまちゃん可愛いね。お名前なんて言うの?」

「この子ね、クマっていうんだよ!」

「...くまのなまえがクマ?」

「うん!」

正直に言おう。
私も子供は苦手だ。

借物→←安息



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年6月10日 21時

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