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羨望 ページ22

「聞いたかい、ほら、向こうに万事屋ってあんだろ?あのお登勢一派の。そこんとこの白い兄ちゃんが最近女連れて歩いてるって話。」

世間話を始めるのは、向かいで定食屋を営む女将さん。
途端に始まる井戸端会議に巻き込まれてしまった。

「その相手がいいとこの嬢ちゃんらしくて、飲み屋の親父が大騒ぎなんだよ。なんでも嬢ちゃんの方からあのちゃらんぽらんに惚れ込んだってんだから、そりゃあたしも驚いたけどさ。」

女将さんは何処からそんなことを聞いてくるのか、以上に詳細まで嬉嬉として話してくれた。
はじめは家柄を隠して用心棒の依頼をしに来たのだとか。
その後彼女に何が起こって、銀ちゃんにどのように惹かれていったのかなんて分からないけれど。

あの煩わしい感情をぶち破って、全部を受け止め彼に、彼女もまた救われたんじゃないだろうかと思った。

「でも坂田さん、この辺じゃ評判の良い方ですよね。普段こそあれですけど。」

「ほんとねぇ...。まあ職業柄か人柄からか、あの兄ちゃんに恩がある人間は多いしね。.......普段はあれだけど。」

ふと二日酔いの時の死んだ顔とか、鼻をほじりながら風をきって歩く姿が頭に浮かび、女将さんと一緒に吹き出した。

そう、普段はあれ。

そういうギャップに女は弱い生き物だ。
パチンコ常駐男にお嬢さんが惚れてしまうのも、私が彼をどうしても忘れられないのも、性みたいなもの。

「.....でもなんだかんだ言って、お似合いだと思いませんか。」

「あの2人がかい?」

「はい。馬鹿に付き合ってくれる奥さんと、情に厚くて頼れる旦那さんなんて。素敵じゃあないですか。」

「確かにね。あたしも上手くいくとは思うよ。」

店を訪ねてきた彼女は、まず第一印象、清楚でおしとやかな女性。
たった数分の会話でわかる事は少ないけれど、逆にたった数分ですら感じられる包容力があった。

噂は所詮誰かが尾ひれはひれつけた結果だ。
本当に彼女がその通り、立派なお嬢様で素晴らしい人間かどうかなんてわからない。

何より、銀ちゃんの選んだ相手なのだ。
それがどんな手を使って彼女を探るよりも、確かな証拠。

上質な着物を身に付けながらも、彼女が髪にさしていたのは、街中で手に入るさほど値の張らない金の簪だったのだから。
『素敵な簪ですね。』なんて白々しく尋ねれば、くすぐったそうに控えめな笑みを零した。
ありがとうございます。とっても気に入っているんです。

なんて、
大事そうにそっと簪に触れていた。

日々→←結実



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年6月10日 21時

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