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共犯※ ページ14

銀ちゃん以外の身体を知らない私にとって、他の男性は未知の存在だった。
いわば不安と恐怖の対象。

けれど不思議と土方さんにはそういった類の抵抗感がなく、緊張がほぐれてきた頃になると、心地よささえ覚えた。

壊れないようにそっと、慈しむような行為。
多分そういう所も含めて、銀ちゃんを思わせる何かがあったからだろうか。

二人は、似ている。
だからこそ黒髪の彼を銀色のあの人だと思い込むのは、容易かった。
その体温の微妙な差に目をつぶればいいだけの事。

ちがうこの人じゃない、私が欲しいのはたった一人だけ。
そんな風に叫ぶ本心を押し殺して、ただ本能に身を任せて喘ぐ。


「っ....ぎん、ちゃん。」


私が何度銀ちゃんの名を呼ぼうと、土方さんは嫌な顔一つしなかった。

土方さんと居ながら、夜を共にしながら。
私の脳内を支配していたのは別の男で、必死叫ぶ名もまた目の前の彼の物ではなかったというのに。

何てこの人は心が広いんだろうかとはじめは思っていたけれど、後になってその理由を知ることになる。



土方さんが余裕のない声で、たった一度だけ零した名前。
私ではない女性の名前だった。

どんな名前だったかは忘れてしまったけれど、きっと彼女は土方さんにとっての唯一無二であったのだろう。
そう思わせるほど、真剣な声色をしていた。
土方さんに愛される女性はどんな人なんだろう、とふと思う。
死してもなおこれほどまでに渇望される彼女に嫉妬した。

私は土方さんを愛しているわけではないけれど、誰かにとってそれほど大きな存在に慣れることが羨ましかったのだ。


私と同じくして、土方さんもまた、私の事なんて見てはいなかった。
その向こうにいる愛する彼女の事を思って、私をその彼女だと言い聞かせている。






何て最低な男だろう。
けれどそれを言ったら、私はなんて最低な女なんだろう。





▽▲





目を覚ますと、土方さんは既に服を着終わった後だった。
いつも通り制服をきっちりと着こなしている。
それを見た途端、いつもの街にいる彼と関係を持ってしまったのだという事実がやっと現実味を帯びてきた。


「おい、大丈夫か。」

「...はい。おはようございます土方さん。」


目尻が少し下がった彼は、心配そうな顔でこちらを見下ろしていた。
すっと伸びてきた暖かな手が私の頭を撫でる。

ああ、こんなにも苦しい朝を迎えたのは初めてだ。


「.......無理すんなよ。」


彼の優しさは、とても残酷な響きをしていた。

沈痛→←贖罪



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 坂田銀時   
作品ジャンル:アニメ
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月見おはぎ - ただの思い過ごしかもしれませんが、物語の中にDOESさんの曲名が入っていて銀魂愛を感じました。最高のお話を有り難うございます。 (2021年9月26日 18時) (レス) @page11 id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - コメントするのこれが初めてです、、今まで読んだ作品で一番切なくて一番胸が痛くなって一番感動したお話でした。素敵な作品をありがとうございました。。 (2020年3月17日 23時) (レス) id: 97657b2818 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» 燻った想いたちが不完全燃焼の状態で終焉を迎える。そんな物語を目指しました。そのようにおっしゃって頂けてうれしい限りです。課題頑張ってください...!高杉長編と沖田の心中ロメオを更新しております。そちらの次作でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年7月31日 21時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
なるぽんず - 読んでいて胸が苦しくなるような、心に響くお話でした。読み終わった今も悶々とした気持ちでいます。夏の宿題の読書感想文、できることならこれで書かせていただきたいくらいです(;_;) 切なくて悲しいけれどじんとくるお話をありがとうございました。次回作楽しみです (2017年7月31日 13時) (レス) id: fa67502a01 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - ローズさん» 執筆している側としても居酒屋あたりを思い返すと、考えさせられるものがあります....。最終話以降の展開の細かい展開は、やはり読者様達の御想像にお任せしたいとおもいます。こちらこそ、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年6月10日 21時

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