【銀魂】最低な恋をしよう【銀時土方】

頂上 ページ33

通りの中央に呆然と立ち尽くす私に声をかける土方さんは、一瞬、躊躇いを見せた。
それから何処と無く上の空で、中身のない事ばかり口走る私から、何かを察したような態度をとる。

動揺を隠し切れない自分に嫌気がさした。

結局遊園地に入ったのは、午後一時を回った頃だ。
折角のデートのはずが、少し、重たい。

目線を上げようとしない私の頭に、不意に立ち止まった土方さんがそっと手を乗せる。
わしゃわしゃとセットされた髪の毛なんてお構い無しにかき乱して、ペットとでもじゃれるみたいな動作につい笑い声をあげた。

｢ちょっ、やめてくださいってば土方さん。」

「辛気くせぇ顔してっからだろ。｣

｢それはその。....すみません。｣

｢ったく。てめーは謝りすぎなんだよ。何も悪いことしてねぇ時は謝んな、堂々としてろ。同じ言葉易々と吐いてっと、本当に使いたい時に伝わらねえだろ。」

ぐちゃぐちゃになった髪を整えながら、私はただ｢すみません....。｣としか言えなかった。
ごく自然に口から飛び出す、謝罪。
日常的に言葉の安売りを繰り返す私には、少々難しい説教だ。

「で、どれ乗んだ？」

「お化け屋敷にしましょう！」

「それ以外でな。」

「えっもしかして...?｣

怖いんですか？
にやつきながら顔を覗き込むと、若干恥ずかしそうに目線をそらす土方さん。

｢んなわけねーだろ！お前あれだぞ、たかがキャストがメイクして騒ぐだけのアトラクション怖いわけねえだろ！？｣

｢....最新プロジェクションマッピング導入、年齢制限ありって書いてありますね！」

｢おおおっあれ、あのぐるぐる回るやつなんてどうだ！！こないだできたばっかで大人気って書いてあんだろ！！よーーしあれにしよう、俺はあれに乗りたい。｣

じゃあ妥協して観覧車なんてどうですか、と振れば、もうお化け屋敷以外なら何でもよかったらしく快く承諾してくれた。




カラフルなゴンドラがゆっくりと回転する。
押し込められた空間は思ったよりも快適で、徐々に遠ざかっていく地上を眺めるのは、やはりいくつになってもワクワクするものだった。
観覧車に乗ると、昔から何故か感傷的な気分になってしまう。

日に照らされて煌めく窓だとか、空に吸い込まれてしまいそうになる感覚だとか。
そういういくつもの要素が重なって、普段秘めた思いを吐露させてしまうんだろう。

頂上でキスをしてしまう恋人の気持ちが、少し、わかる気がする。

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