にじゅういち ページ21
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おはぎをよっつ、おはぎをよっつ………
心の中でブツブツと呟きながら、Aは和菓子屋に入った。
ぎゅっと小銭を握りしめ、店主の女性を見上げる。
ようやく人を怖がらなくなってきたAは、意を決して口を開いた。
「おはぎよっつください!」
良かった、ちゃんと言えた…
Aは内心ほっとしながら、小銭を台の上に置く。
「あらお嬢ちゃん、元気がいいねぇ。ひとつおまけしてあげるよ」
「ありがとう!」
ニコリと微笑んだ店主が、五つのおはぎを包みに入れる。
それを見てAは、おはぎを食べる不死川のほんの少しだけ嬉しそうな顔を思い出した。
Aは店を出ると、少しソワソワと自分の帰りを待っていた不死川に自慢気に包みを掲げた。
「かえた!」
「おし、任務完了だなァ」
不死川がぽん、とAの頭を撫でると、嬉しそうにAが笑う。
以前は人を前にした途端に威嚇していたAも、今では人の多い町に出ても全く怯えた様子を見せないようになっていた。
恐らく、不死川や炭治郎たちの優しさに触れ人を恐れる気持ちが薄まっていったのだろう。
こうして、一人で買い物をすることも出来るようになった。
「あのね、おはぎひとつおまけしてもらえたんだよ!」
「常連の俺ですらおまけしてもらったことねェのに…」
「かおがこわいからじゃない?」
「あ"ァ?」
「ほら!そのかおだよ」
眉間に寄ったシワを指差しながら、Aが嬉しそうに笑う。
そして、「こぉんなかお!」と不死川の表情を真似て見せた。
「んな間抜けな顔じゃねェよ」
「…Aもまぬけじゃないもん!」
フイッと顔を逸らしたAの頬を不死川が掴みグイッと自分の方を向かせる。
その顔の近さに、Aは少し頬を赤くさせた。
「……本当にまぬけな面してんなァ」
「まぬけじゃないもん………」
見つめられるのが恥ずかしくなり、Aは視線を落とす。
すると、不死川はパッと手を離しぐしゃぐしゃとAの頭を撫でた。
「ほら、行くぞ」
「うん!」
少しぼうっとしていたAを置いて、不死川が歩き出す。
二人は並んで屋敷へと帰った。
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にゃんこ - 完結おめでとうございます!すてきな世界ですね!無主ちゃんも口がたっしゃに……(おばあちゃんみたいですね)。新作見ました!面白いです! (2020年1月6日 18時) (レス) id: be5a9b4de5 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 完結おめでとうございます!まおうさん良い人で良かった! 実弥と夢主さん一緒にいられる結末で良かったです(*´ω`*)個人的に炭治郎も出てきてくれて嬉しかったです♪ (2019年12月18日 4時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
カボスプレス(プロフ) - 優しい世界ですね...ホワホワしました。いたいのとんでけ のところで思わず一緒に泣いてしまって(*´-`*) ほかのお話も読みに行きます! (2019年11月16日 11時) (レス) id: dccf658439 (このIDを非表示/違反報告)
カズハ(プロフ) - 泣きました…不死川夫婦お幸せに…まおうさんにも幸せになってほしい… (2019年11月5日 19時) (レス) id: 082d86be6d (このIDを非表示/違反報告)
よる - 面白そうだなって読んでみたらあなたの新作読んでました笑笑。それにしても、婚約者ええやつやな… (2019年10月27日 22時) (レス) id: bbe87bcae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年10月21日 17時