アラニュエの森 (ページ17)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:91,547 hit

＊おかねもちのこページ17

あくびをしながら箒に乗っていたら、バランスを崩した。

そのまま家の庭にドスンと落ちて、箒が身体の上に降ってくる。

「いってえ……」

顔をしかめていると、家の窓が開いた。

「サトちゃんおかえり。大丈夫？」

マサの後ろから、心配そうな目でサトを見ている三人が見えた。

「大丈夫。ちょっと落ちただけ」
「え、サトちゃん落ちたの！？」

はあ、とため息をついて立ち上がるサト。

マントについた土の汚れを払い、箒も拾い上げる。

「たまには俺だって落ちるよ」
「……そっか」

箒を壁に立てかけて、家の中に入る。

「おかえり、サト」
「ただいま」

挨拶もそこそこに、台所ではなく、いつも座っている椅子に向かう。

サトの研究スペースになっている場所だ。

マントも脱がずにそのまま本を開き始めたサトを見て、三人だけではなくマサまで首を傾げた。

「サトちゃん、ご飯食べないの？」
「後で食べる。先に食べてて」
「はーい」

食べよっか、とマサが三人に話しかけるのを聞いて、腕を組んだ。

困った学生が学園に入ってきたものだ。

どう対処するべきなのか、サトは考えあぐねていたが、気づいたら寝てしまっていたらしい。

松本に肩を叩かれて目が覚めた。

「サト、ご飯は？」
「あぁ……ごめん。食べる」

振り返れば、まだ全員がリビングに残っていた。

マントを脱いで、立ち上がって椅子に座れば、マサに心配そうな目で見られた。

「サトちゃん、学園で何かあったの？」
「え？何もないよ？ ……いや、怒られはしたけど」
「そうじゃなくて、サトちゃんが家の中でも『俺』って言ったから気になったの」

目をパチパチさせて、あぁと納得したサト。

「俺って言ってた？」
「言ってた」

うーん、とまた悩み始めたサトを見て、櫻井と松本が顔を見合わせた。

「サトが俺って言ったの、聞き間違いじゃなかったんだね」
「うん。サトちゃんはね、学園にいるときは『俺』って言うんだよ」

二宮はそれを聞いて納得している。

サトも、マサに余計なことを言うな、と怒る気配もない。

かなり悩んでいるようだ。

「何か悩んでることがあるなら聞くけど。ほら、俺らはその学園ってのを何も知らないし、関わりもないから」

松本の言葉に、顔を上げたサト。

「……それもそうだね。マサ、これはひみつだからね」
「わかった」

頷いたマサ。