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北山side

あの言葉を吐いてから振り返りもせずに喫煙所を出ていった藤ヶ谷。楽屋に戻った時には藤ヶ谷の姿はなく他のメンバーまだちらほら残っていた。「どこ行ってたの」と心配するニカに仕事の話だよ、次の仕事行くわとだけ残して俺も楽屋を出た。
個人の仕事中も藤ヶ谷の言葉が頭から離れなかった。

+++

「でさーーー?って聞いてんの?」

「あ、悪い悪い」

「そんな考えることでもあんのか?」


仕事が終わって、大倉を飯に誘った。介抱してくれた挙句現場まで送ってくれたお返しを早くしないと自分の気が済まなかった。

「そんなに藤ヶ谷くんに言われた言葉悲しかったんか?」

「悲しいとかじゃなくて、どういう意味でアイツがああ言ったのかわかんねえの!」

もう数杯目になるビールを喉に流し込む。

「お前、飲み過ぎや!!!」

ビールのグラスを取り上げようとする大倉に体勢を崩し抱きつく形になる。

「ああー、大倉が隣だったら俺もっと素直になんでも言えたのかなあ」

「じゃあ、その言葉の通りにしてみるか?」

バーカと笑う俺に「本気で言ってるんやけど」と付け足し真剣な眼差しに後に引けない状況になる。今日もうち来るか?と誘う大倉に何故だか首を横に振れなくて頷いた。

+++


「はああ、やっぱりお前軽いなあ。このまま風呂入ったら溺れそうやから明日風呂入り。もう寝ろ。」


「ありがと〜〜、おーくらあ」


ベッドに横たわり、酔っているはずなのに、頭に浮かぶのは藤ヶ谷の言葉、今でも鮮明に覚えているあの声。だあああ、もうわっかんねえ。ぐるぐると頭の中で考えていると、睡魔がいつの間にか飛んでいた。水でも飲もうかと思い寝室を出ると熱心に台本を読んでいる大倉がいた。

「おー、寝てなかったんか?」

ふと顔を上げ俺を見る大倉は優しさをまとっていた。「水でも飲み」と台本を閉じ冷蔵庫に向かう大倉にどこまでやってくれんだ、という申し訳なさが生まれる反面、今は甘えたいという気持ちも出てきた。

「おおくらは、なんで俺といてくれんの?」

「さあ?楽しいからちゃう?」


「なんで疑問系なんだよ!」と笑う俺に、「んなもん直接言うのは恥ずかしいわ!」と心なしか少し頬を赤らめた気がした。

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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時

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