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俺にしとけば、何て都合のいい男になる宣言をした限りここでも別に断る理由もない。
「わかった」とだけ返事をしたが、また藤ヶ谷は台本に目を落として、何も話さなくなった。



+++


・・・やっべ、寝てたんだ。

ふとソファから身を起こせば、綺麗にかけられたブランケット。
そんな小さな優しさでさえも、俺の心を惑わせる。
経験豊富そうだもんな、みんなにしているよな、なんて自己嫌悪に陥っていると、
上半身裸の藤ヶ谷がリビングに入ってきた。髪から落ちる雫に小麦色の肌。綺麗だな、なんて感心していると見すぎたようで。


「何?」


「いや、なんでもない。あ、ブランケットさんきゅ。」



「北山も風呂入ってきなよ」




「お、おう、じゃあ、借りるわ」



タオルとかは全部向こうに置いてあるから勝手に使っていいよ、と付け足した藤ヶ谷。
・・・今日見る藤ヶ谷は、俺の知らない藤ヶ谷で。今までの何倍も、何百倍も優しくて。
今まで以上に感情が溢れそうになる。


浴室に駆け込みシャワーに当たるが、何一つ理解できなくて、結構時間が経っていたらしい。


「北山?」


扉越しに聞こえる藤ヶ谷の声。半透明のそれに藤ヶ谷のシルエットが映りさらにドキッとする。


「どうした?」



「結構時間経ってるのに、出てこないから、なんかあったのかと思って。」




「悪い、もう出るよ」




「わかった」




そう言って消えたシルエット。心配してくれたってこと?かき乱される心を落ち着かせるかのように身体と頭を洗い風呂を出た。



「風呂、さんきゅ」


ガシガシと髪を拭きながらリビングに戻る。


「もう寝る?」


「そうだね」


「俺、ソファでいいから」




「え?何言ってんの、一緒に寝てよ。」





「へ?」




「都合よく使えって言ったのは北山だろ?」



「・・・そうだな、」


いままでのやさしさに勘違いしてた自分。そうだ、そもそも、俺は体しか求められてねえんじゃん。
何、一人で舞い上がってたんだよ。



寝室に入り、ベッドに寝転ぶ。ああ、このベッドは2回目か。だなんて思いながら、これから致されることに身構える。

隣に寝転ぶ藤ヶ谷はあろうことか、俺のことをぎゅっと抱きしめた。





「この前はごめん」

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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年10月19日 0時

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