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少しだけでも、会えたら。
そう思ってステージが終わったばかりの楽屋へ向かうと、衣裳を着たままの叶さんと鉢合わせした。加賀美さんの居場所を聞くとどうやら着替えに行ったところらしくて、戻ってくるのも少し時間が掛かるらしい。
この後のリハーサルもあるし少しでも休んでほしいと思って、呼んで来ようかという叶さんの提案も断って人が少ない楽屋エリアの奥に進んだ。
廊下に設置されたソファに座って、一度深呼吸する。
(なんか焦っちゃった ･･････明日終わったら連絡しよう。
今日じゃなくてもこの気持ちは変わらないから大丈夫、うん)
胸の中にある想いを確かめるように目を瞑ってもう一度深呼吸する。
瞼の裏にはまださっきの光景が焼きついていて、思い出すだけで泣きそうになった。
しばらくそうしていると、遠くから足音が聞こえてくる
「･･･ッ、峯邑さん･･･！」
私服に着替えた加賀美さんがこちらに足早に寄ってくるのが見えた
思わず立ち上がって迎えると、右腕を掴まれて近くの楽屋に連れ込まれた。楽屋の中は電気が消えていて真っ暗だ。
パタン、とドアの閉まる音が聞こえたと思ったらそのまま加賀美さんの腕の中に収まった。
「会いたかった、」
その言葉を聞いて、胸がぎゅぅっと苦しくなる。
背中に腕を回しながら『わたしも』と呟いた声は掠れてしまったけど、加賀美さんにはちゃんと聞こえていたみたいで、応えるように強く抱きすくめられた。
『･･･加賀美さん』
「はい」
『顔見たいです』
そう告げると加賀美さんは一度腕をほどいて、近くの鏡面ライトを灯けた。オレンジ色の淡い光がわたしたちを照らす。目が合うと加賀美さんの手がわたしの頬に触れて、目元をなぞる。
「もしかして泣いてましたか...？」
『さっきのステージの、加賀美さんのソロで･･･感動して、』
「･･･そう、でしたか。悲しくて泣いてるわけじゃないなら良かった」
『すごく優しくて、あたたかくて。綺麗でした、』
安心したように微笑む表情にさっきのステージで見せていた笑顔が重なって、また涙が込み上げてくる。
頬に添えられた手に自分の手を重ねると、目の前の瞳に熱が籠った気がした。
腰を抱かれたまま誘導されて、近くの机の上に座る。立っている時よりも身長差がぐっと縮まって、いつもより顔が近い。両脇に加賀美さんの手があって、目は合ったまま逸らせない。
「･･････キス、しても？」
『･･･だめって言ったら』
「やだ」
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作者名：雨 | 作成日時：2022年9月23日 18時
