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その後、激しさを増したAとグレイブスの攻防は、ほぼ同格ーーー。
いや、どちらかといえば、グレイブスの打ち出す魔法を全て弾き飛ばし、その隙を狙い淡々と攻撃するAの方が、僅かに優勢かにみえた。

しかし、ある一瞬で、状況はぐるりと変わってしまう。

「………っ、な、にを……」

閃光の嵐を搔い潜ったAがグレイブスの懐に潜り込み、攻撃を放とうとしたかにみえたわずか1秒もない間。彼女は再び後退し、足を庇うようにしてしゃがみこんでいる。2人の影で様子を見ていたティナにさえ、何が起こったのか分からなかった。
しかし、目を凝らしてようやく気付く。
Aの左足から、微かに一筋血が垂れていた。
グレイブスはいつのまにか小型の隠しナイフを杖を持つ方とは逆の手で握っている。
どうやらあれが、Aの足に傷をつけた凶器らしい。

(……でも、あんなナイフの傷くらい……)

直ぐに治してしまうはずだ、ティナは思った。
それまでの戦いで、Aは普通の人間ならあっという間に致命傷になりそうな攻撃を受け続けてきたのだ。本人が気にする間もなく、巻き戻し再生のように傷が治癒していくのを、ティナもグレイブスも視認している。
しかし、今回は様子が違った。
眉根を寄せ、額には汗が伝い、心なしか顔も青ざめてきている。
明らかに、それはただの切り傷ではなかった。

「学生の頃、稚拙ではあるが貴様のような種族を研究していた。それが役に立ったようだ」

ナイフをちらつかせながら、グレイブスが不敵に笑った。
……まさかーーーーーー。
ティナとAの思考は、同じ一点へと辿り着く。

「古い文献にあった通り、セストラルの血は、吸血鬼にとっての毒になるらしい」
「……ど、く……?」
「まあ私も半信半疑だったが……これで効果が実証されたな」

言いながら、グレイブスはナイフの切っ先を布でぬぐった。
ふらふらとおぼつかない足取りで、それでも後ずさろうとするAに近づいていく。

「安心しろ、死にはしない。殺してしまっては勿体ないからな」
「………っ」
「待ちなさい、グレイブス!」

動けなくなったAの腕を引こうとしたグレイブスを止めたのは、それまで身を隠していたティナの一喝だった。

「また茶々を入れに……」
「あなたに、Aを連れていかせはしない!」

ティナは、器用に姿くらましと姿あらわしを使い分け、グレイブスの目の前から一瞬で己とAの身体を消し去った。


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ミコト(プロフ) - 更新大変だと思いますが、続き見たいです!!楽しみにしてます!! (2019年4月6日 11時) (レス) id: 47f303260b (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - つづき見たいです (2018年12月7日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
のん民(プロフ) - こうしんやめたの? (2018年12月7日 3時) (レス) id: 8246ba9fb8 (このIDを非表示/違反報告)
らな - 頂きものページは別で記載していただきたいです。読みにくい (2018年11月26日 0時) (レス) id: ca6b27a01c (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 連載始まった時から読んでいます。1番好きな小説です。更新大変かと思いますが楽しみに待っていますm(*_ _)m (2017年2月26日 23時) (レス) id: 88bfe4bc23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://twitter.com/kome_tsuku  
作成日時:2016年12月26日 0時

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