結婚しましょう【伏黒恵】

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「現れなかったね」






あの話をしてから１週間。あの呪霊は現れなかった。それはそれでいいけど、なにかスッキリしない。






『……五条さんがいつ来るかわかんないと思ったら近づけなかったのでしょうか…』

「それ、本当に低級呪霊？」

『……だと思いますけど…』






ため息をついてもどうしようもない。私が自分で祓えるのが一番いいが、こういう時補助監督の決まりは不便だ。戦闘してはいけないのだから。






「その話…本当…？」

『え』

「あらぁ、恵ぃ〜」






廊下の角から現れた恵が、心配そうに私を見下ろしている。五条さんの隣に立った恵はこれでもかというくらいに眉間に皺を寄せている。ダメだよ、その皺、跡になっちゃう。






「…Aさん…本当なの？」

『……うん』

「何で俺に話してくれなかったんだ…！」

『いや……だって恵は生徒だし…』

「そんなの関係ない！」






ガッと恵に肩を掴まれて体が強張った。真剣な目で、強い視線。本気で私を心配してくれている表情が、何故だかすごく切なく感じた。






「はーい、恵、その辺にしてー」

「……ごめん」

『…いや…』

「とりあえず、明日また様子を見よう。それでまた現れたら対策を考える」

『はい、ありがとうございます』






去っていく五条さんに頭を下げて、まだ隣にいる恵を見上げた。その顔は悔しそうで寂しそう。そんな顔しないでよ、恵に心配かけたくなかったんだから。






『ごめんね恵、言わなくて』

「…１番に言ってほしかった」

『でも、恵に余計な心配かけたくないんだよ』

「……子どもだから？」

『違う、恵は過剰なくらい心配するから』

「………そりゃ心配するよ…好きな人だから」






そう言った恵にそっと手を取られ、熱すぎるくらいの視線に、また顔が熱くなる。あぁ、ずるい。伏黒恵って子は。

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