寂滅の天使は夜に笑う3 (ページ24)

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105阿部side ページ24

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阿「ふっか…本当にどうしたんだよ。翔太が壊れるって、あの女の子のことを言うつもりなんだよね、どうして？」

ポロポロと涙を流すふっかに優しく話しかける。こんな風に人前で泣くふっかなんて初めて見たから、さっきまでの苛立ちは何処かへ消え去ってしまったようだ。

阿「ねえ、ふっか助けたいって言ったじゃん。一番最初は照だったんだよね？次に俺。殺人を犯した俺が、嵐の中外で倒れちゃったのを、助けてくれたよね。」

まるで昨日の事のように鮮明に思い出す。あの時はとにかく遠くへ逃げなきゃという一心で、嵐の中あてもなく歩いていた。

肉体的にも精神的にもボロボロで、体から力が抜けて倒れてしまった所をたまたま通りかかったふっかが、声を掛けてくれた。血塗れで、どこからどう見ても怪しい俺に。

「どうしたの、大丈夫？」って。

意識が遠のく俺に「頑張れ、頑張れ、大丈夫だよ。」って。

その言葉に凄く安心感を覚えたんだ。

阿「俺、ふっかのお陰で今生きてるんだよ。そのあとだって、精神的なケアしてくれたじゃん。」

深「ちが、う…。」

阿「何が違うの？」

深「いいから…は…なし…て…」

阿「嫌だ。離さない。俺にとってふっかは恩人なの。家族なの。泣いていたら心配になるし、力になりたいって思うよ。」

ゆり組の事を見つけだしたのだって俺だよ？それをふっかに教えたら真っ先に助けに行こうって言ったのふっかだもん。ふっかが優しいのなんて知ってる。

知ってるけど、でも、俺らの事が嫌いなんだね。いや、嫌いじゃないけど、嫌いなんだ。ふっかは。

俺だけが知ってるふっかの昔のこと。

阿「許せないんだよね？…俺らが。」

深「は…」

その言葉に動揺したのが分かる。そりゃそうだ、ふっかの昔のことを調べたなんて言ってないから。

阿「ごめん。ごめんね。ふっか」

深「うるさいｯ…」

阿「もう、離すよ。」

これ以上言ったらふっかが辛いだろう。強行突破もありかと考えたけど、やっぱりやめだ。

掴んでいたふっかの腕を離す。腕は少し赤くなっていた。痛かっただろう。

阿「ごめん。一回康二に診てもらおう」

深「へいきだから」

阿「ごめん…」

ふっかが良く言っている言葉がある。「俺は矛盾した性格だから」。それはどういう意味なの？

俺じゃあふっかの傷は癒せない？

ねえふっか。何度目か分からないけど、ごめん。