1139話 運命は変わり始める ページ9
「楽しかったね独歩君、Aちゃん」
『はいっ!』
「カラオケは時間があっという間だな…。もう夕方か……」
「またこのメンバーでカラオケに行こうね!」
『そうですね!その時は私も歌える様に歌を聞いてみます!』
「Aさんの歌声気になるな。楽しみにしてるよ」
空は温かいオレンジ色に染まり、飛び回るカラス達の合唱が降り注ぐ。
横並びで自分達の家へ歩いて帰る彼等は笑顔。楽しい時間が終わった名残惜しさはあるものの、また次がある。通り過ぎる人や車を横目に、1歩、また1歩と足を進ませる
外で女性にすれ違う可能性がある為、一二三はジャケットを着用。
暗くなり始める空に負けず煌びやかなオーラを放つ一二三、いつもの疲れきった表情では無く爽やかな笑顔の独歩。Aは次が楽しみだと抑えきれない華やかな笑み
あと少しで寂雷達が待つ家に着きそうな頃、Aは笑顔を崩さず彼等へ声を掛ける
『一二三さん、独歩さん』
呼ばれた2人はそれぞれ返事をして顔を見ると、笑顔の中に決心を感じられる表情に気付く。大方の予想は着いたが、特に聞く訳でも無く彼女から発せられるのを待った
その気遣いを知ってか知らずか、Aはぎゅっと2人の手を握った。緊張なのか彼女の手は少し冷えている
大丈夫だよ、と言い聞かせる為に2人も手に力を込めて応えた
『私、全部じゃないんですけど記憶が戻ったんです。だからズレも治ったと思うんです。その……家に帰ったら、皆に話そうと思うんですけど……き、聞いて頂けますか…?』
「勿論さ!僕はもっとAさんの事を知りたいからね!」
「あぁ俺もだよ。きっと先生や碧棺さん達も聞いてくれるよ」
『っ……ふふ、ありがとうございますっ。そう言ってくれると思ってました』
「じゃあ誰が一番早くに家に着くか競走しようか!」
「はぁ!?い、今からか!?」
「よーいどん!!」
『え、えぇ!?一二三さん!?』
「お前狡いぞ!!」
『独歩さん!!?』
子供の様にはしゃぐ一二三は、学生時代の下校のノリで急な競走を始めた。はははっ、と笑いながら走る背中を独歩は狡いと叫びながら追いかける。取り残されたAも小さく噴き出して遅れて追い掛けた
平和な外、家まであと数キロ。街灯が照らす帰路は楽しげな笑い声が響く
その様子を、ひっそりと男が見送っていた
「────いよいよ俺のシナリオから完全に外れやがる。俺も
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時