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████話 まだ平和の中だった ページ6

───とある大部屋に聳え立つ大きなテレビ、その前には木の板を貼り付けて簡易的に作られたステージ。取り囲むのは形がバラバラな椅子。それらに座る彼等は、手拍子や野次で目の前の光景を楽しんでいた


「俺がぁ必ず〜護ってみせぇる〜♪」


少し形が歪なマイクを掴み、気持ちよく歌う男。彼は青い少女に“パパ”と呼ばれる男だ


「古いぞー!新しい曲歌えー!」

「何十年前の曲だぁッ!引っ込めー!」


完全な悪意ではなく、仲間内の悪ふざけが歌う男の声に邪魔をする。最初こそ声の圧で抵抗したが、段々と増えてくる声に我慢ならなくなり、キーンとハウリングを起こしながら彼等に怒鳴り声を上げる


「うるっせぇな人が気持ちよく歌ってんの邪魔すんじゃねぇ!!」

「お前の声の方がうるせぇよーっ!」


あははっ、と大勢の笑い声が場を賑やかにする。
怒りが収まらない彼は、流れ続ける曲をバックミュージックに捲し立てた


「テメェら何十年前だろうと名曲は名曲なんだぞ!?ガンダムとかエヴァとかマジンガーZとか!!1回聞いてみろやッ!!未だにカラオケランキングに載ってる曲もあるだろうが!!」

「お前のはマイナーなんだよッ!」

「あぁ!?マイナーだからどうした!!皆が聞いてるからって言う薄っぺらい理由で聞くお前はとは違ぇんだよ!!アニメも原作も曲も愛してこそファンだろうがァッ!!!」


マイクを置いた男は野次を飛ばしていた仲間達に突撃し、取っ組み合いを始める。
周りに取り囲む者達はお祭り騒ぎだと笑顔で野次を飛ばしていた


そんな所を少し離れた所で見るのは、やっさんと後輩とA。彼等はやれやれと肩を竦めジト目で目の前の光景を見ていた


「アイツら元気だねぇ……」

「センパイ……アニメとか馬鹿にされるとキレるタイプっすからね……」

『ぱぱ元気だね』

「にしてもやっさん、急にカラオケ大会するとかどうしたんすか?」

「ストレス発散は大事だろ?それにアイツ、新兵器の開発に行き詰まったから、参考になればと親切心で提案したんだよ」

「提案しただけで、あのカラオケセット作ったのセンパイっすよね……?」

「マジで便利屋だよな。頼んだらテレビもスピーカーも作りやがる」

『わたしもうたっていーい?』

「あぁ勿論さ、アイツの後に歌わせてもらえ」

『わーいっ』


「テメェ今何つった!?」

「その歳でアニメとか恥ずかしいだろうが!」


子供が無邪気に喜ぶ前で、子供の様な喧嘩をする彼等はまだ平和の中だった

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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時

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