1179話 約束は守██ら。 ページ49
着信音が鳴ったからか悍ましい雰囲気は失い、スマホへ駆け寄ったA
画面には“非通知”と表示されており、誰からか分からない。訝しげな表情で首を傾げ、少し悩む彼女
しかしどれだけ経っても切れる様子の無い着信音に負けて、喉の調子を整えてから電話に出た
『はい』
声は完全に男の子。いつか演じた海波澄鴻利だ
折角久しぶりに演じた澄鴻利だったが、彼女の耳に触れた声で直ぐに崩れてしまった
《よぉA、元気にしてっか?》
『っ!やっさん!!』
《はっはっはっ、そんなに嬉しい声出しちゃっておいちゃん嬉しいねぇ。だが、折角の演技を止めちゃうのはオススメしないぜ?俺がやっさんの声に似た誰かかもしれねぇしな》
『あっ…うぅ…』
《次からは気をつける事だ。良いか?》
『うん……気をつける』
やっさんに叱られ、しゅんとなるA。それは完全に幼い様子で、やっさんにしか見せていない姿
《そうだA、お前さん今兎さんの家にいるんだろ?》
『知ってるの?』
《俺ぁ何でも知ってっからな》
『やっさんの言う通りだよ。絶対に外に出ちゃいけないって言われてそれも守ってる』
《そうかそうか、なら安心だな。最近ヨコハマは物騒だから心配してたんだよ、このままちゃんとお留守番してるんだぞ?》
『うん!あ、そうだ!やっさんの名前ってアマヤドレイって言うんでしょ!?』
《おー?まさか飴村に聞いたのか?》
『乱数さん知ってるの?』
《まぁな。さっき会ってこれからもAと遊んでくれって頼んでたんだ》
『そーなんだ!』
《何か面倒事に巻き込まれたらしいが、ちゃんとおいちゃんが護ってやっから安心して見てな》
『ホント!?約束してくれる!?私じゃ何も出来ないから……』
《任せとけ。俺が保証してやるよ》
『ありがとうやっさん!!』
乱数の命が護られると安心したAはぎゅっとラビ君を抱き締め───ようとして手元にいなかったことに気が付く。いつの間に落としたんだろう。彼女は少し唸ってから転がっていたラビ君を取りに行き、抱き締め直す
《……?どうかしたかA》
『いや?何も無いよ』
《本当か?ちゃんと言ってくれなきゃ流石俺でも分かんねぇぞ》
『本当だよ。何も無い。うん……』
《じゃあ何で不安そうなんだ?》
『………だって…
《…………。》
スマホから鳴るやっさんの唸り声は、重々しく彼にしては珍しい焦りが感じられた
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時