1176話 そんな気がして安心出来るんだ ページ46
｢なぁA、天谷奴零って知ってるか？｣
《アマヤド……レイ？》
如何にも初めて聞きましたと言わんばかりのオウム返し。彼女には接触してないのかと思った乱数だが、もしかすると偽名を使っている可能性もある。
なので服装から雰囲気まで細かく伝えれば、彼女は嬉しそうな反応を響かせた
《もしかしてやっさんですか！？》
｢は、はぁ？やっさん…？｣
《はい！前 私が乱数さんの煙草の品種を聞いた時を覚えてますか！？その煙草を持っていたのがやっさんなんです！》
乱数が生まれて初めて出会った人間が零。そしてその時に彼が吸っていた煙草に興味を持って、同じ品種を真似して吸っていた。だからこそ同じなのは必然だが、まさかここが繋がっていたとは……
元々謎が多すぎる男だったのにより謎が深まった。Aと関係があり、東方天乙統女とも関わりがある。一体何者なのか…
《そっかぁ、アマヤドレイさんって名前なんですね！》
｢そ、そんなに嬉しいのか…？｣
《はい！記憶にはあまり残ってないんですけど、ずっと昔に育ててくれた家族みたいな人なんです。手掛かりが無くて“やっさん”って名前だけが唯一知ってる名前だったんです！》
｢へぇ…育てた、ね……｣
中王区にいると分かっているからか、アバウトな言い方ではある。だが寂雷から聞いた話から考察すると、ずっと昔というのはオートマタになる前の話。零はその時に居たのか……？
乱数の表情は険しいが、いつ中王区に聞かれるか分からない状況でこれ以上話を掘り下げる訳にはいかない。彼はぐっと拳に力を入れて彼女に痩せ我慢をした
｢じゃあボクが出来るだけ調べてあげる｣
《ホントですか！？》
｢うん！丁度その人見かけて、多分だけどDRBの会場にいると思うんだ！だから探してみるよ！｣
《ありがとうございます！で、でも、先ずは乱数さんの戦いがありますから、そっち優先ですよ！！》
｢分かってるってば〜。優勝するのは………ボ、ボク達FlingPosseだからネ！｣
ダメだった。
どれだけ取り繕おうとしても、自分には先が無いと思ってしまえば声が震えてしまう。優勝なんて出来ない。ここにいる飴村乱数は。違う飴村乱数が優勝するんだ
その恐怖が伝わってしまったのだろう、電話先の彼女は少し黙って直ぐに明るい声を出した
《乱数さんっ！きっと私のミサンガが前みたいに助けてくれますから、ドーンっと戦って来て下さい！》
君がそう言ってくれると、そんな気がして安心出来るんだ
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作者名：刹那 | 作成日時：2024年3月4日 0時
