1175話 中王区と関わりが深い男 ページ45
明るい照明、長い廊下。
覚悟を決めた乱数でも、進む足はとても重い。歩く度に死に近づいている気がして涙が出そうだった
幻太郎と帝統は今頃何してるかなと、気分を誤魔化そうとぼんやり考えていると、予想外の男に出会う
「っ……。天谷奴……」
「よぉ飴村ぁ。奇遇だな」
高級感あるワインレッドの服に怪しく輝く金色のアクセサリー。存在をより恐ろしく見せる黒色のファーを纏うこの男は、中王区、中でも東方天乙統女と関わりが深い男────天谷奴零。
彼は掛けているサングラスをズラし、鋭いオッドアイを乱数に向ける
何もかもを見透かし、嘲笑う様な瞳を乱数は嫌っている。不快感を隠さず表情を険しくすると、零はスゥ……と瞳を細くして「へぇ……」と何かを察した
「な、何だよ……」
「いんやぁ?こっちの話だ」
態度が気に食わなかった乱数は彼の横を通りポッセの下へと向かおうとした。
すれ違った瞬間、真っ直ぐ前に顔を向けている零は口を開く
「最近占いにハマっててよ。お前さんの運勢占ってやるよ」
「はぁ?」
訝しげな乱数なんて気にせず、歩き始める零
「お前はDRBが終わった後もAと遊んで楽しく過ごす」
「は!?俺にはもう後なんて!!それに何でお前がAの事───」
「じゃあDRB頑張れよー。後悔の無い様に全力でな?アイツも遠くから見てる事だし」
「待て!!!」
そう言い残すと零は廊下の角を曲がり姿を消す。咄嗟に乱数が走ってあとを追いかけても、曲がった先に彼はいない
得体の知れない男がAを知っている。彼女が危ない、そう不安に駆られ衝動のまま彼女に電話を掛けた
直ぐに繋がる電話。乱数の耳に触れたのは呑気な声だった
《乱数さん!どーしました?緊張してきました?》
「あ、いや、その……お前の状態が知りたかったって言うか、どうしてるかなって……」
あまりにも平和そうで演じれなかった彼は素で会話をする。安堵のような肩透かしのような、複雑な乱数なんて知る由もなくAは弾んだ声で答える
《今DRBの特番を見てます!予習をした方が明日の戦い分かるかなって》
「そう。ちゃんとセキュリティがしっかりしてる所にいる?」
《はい!一歩も外に出るなとも言われてます!万が一外に出る時は連絡しろとも!》
「す、凄いな…。それなら安心か……」
一旦は大丈夫そうだ
しかしあの男は油断出来ない。成る可く周りに聞こえないように、だけど彼女には変に思われないように小さく尋ねた
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時