1174話 約束、守れないかなぁ…… ページ44
「先程の騒ぎは何だ、飴村」
「えぇー、だってだってー寂雷がウザかったんだもん!」
「今度勝手な行動をした場合貴様の──」
「分かってるってばー!でもオネーサン達の狙い通り、寂雷とボク、左馬刻と一郎の仲はすっごく悪いでしょ?そこはボクの働きのおかげなんだからそこは褒めてよね!?」
「ふん、それが貴様の仕事だ。当たり前の事をして何を褒めろと?」
中王区のとある一室。
無花果と乱数が向かい合ってソファに座り、緊迫した空気で2人は密会をしていた
「飴村、最近の3人の状況に変わりはないか?」
無花果に尋ねられた乱数は笑顔が消え去り、低い声で答える
「あぁ。寂雷は俺の事を憎んでるし、一郎と左馬刻も相変わらずだ」
乱数の答えに満足する訳でもなく、無表情のままの無花果は残酷な指示を下す
「そうか、では貴様に仕事を与えよう。明日のDRBで、神宮寺寂雷を真正ヒプノシスマイクで洗脳しろ」
「なッ!!?」
死刑宣告。乱数にとってそれに変わりない言葉だった
皆が手にしているマイクより負担が大きく、使用すれば使用者が死ぬ。しかしその分相手には確実な精神干渉が可能で、乱数のクローン達を使って合歓や空却、簓等を中王区は洗脳してきた
遂に自分の番。
乱数の頭には力無く崩れ落ちたクローン達が過ぎる。感情はなく、ただ命令だからとラップをして苦しんで死んだ姿。
恐怖しかなかった乱数は立ち上がり、青い顔で訴える
「そ、それって!俺が死ぬじゃないか!」
「あぁそうだ。貴様は中王区の道具、生きようが死のうがどうでもいい。それに結局命令に背いたところで、命令違反として我々が処分する。それならば、しっかりと貴様の
無花果はそう無慈悲に告げると部屋を出ていく。
独り残された乱数。静かで冷たい空気のここが、自分の廃棄場所の様な気がして視界が歪んだ。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
そんな言葉が木霊する。
乱数は零れそうな涙をそっと拭い、ポケットからある物を取り出した
「…………約束、守れないかなぁ……」
ちぎれたミサンガ。
それは一度奇跡を起こした御守り。手首に巻こうとしても、中王区に彼女の存在が知られると危険だから巻けなくなった大切な物。せめて直そうと考えたが、そのちぎれた事実があの日を思い出させてくれるから、敢えてそのままの彼のターニングポイント。
もう彼はどうするか、覚悟を決めていた
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時