1172話 偽善者のドグソ野郎 ページ42
───左馬刻達は中王区の入口へと辿り着く
まだ遠いがそれでも見える重々しく分厚く高い壁。それは中王区と他のディビジョンの存在の違いを示してくる忌々しい壁。
いつかぶっ壊し、最愛の妹を見つけ助ける。少佐を助け出し、再び中王区を制圧する。野望を叶えてくれると言ってくれたリーダー、運命的な出会いをし共に背中を預けられる仲間の為に戦う。
自然と3人同時に足が止まり壁を見上げながら目を細める。それぞれ思い馳せた左馬刻達は覚悟を固めた
視線を落とし再び足を進めると、段々と見慣れた集団が見えてきた
Buster Bros!!!、FlingPosse、麻天狼。これから戦う相手が入口前で何やら交流をしている様だ
一郎が見えた瞬間、銃兎と理鶯の表情が強ばる。そのままチラリと左馬刻を見やると、彼は一瞬寂しそうな表情をしてから眉間に皺を深く作った
そしてそのままヅカヅカと進んで口を開かせる
｢よォ───偽善者のドグソ野郎｣
｢左馬刻……ッ！！｣
｢さんを付けろやぶっ殺されてェのかァ！！？｣
向かい合う2人の間に並々ならぬ険悪な空気が生まれる。今すぐにでも胸ぐらを掴みそうな状況に、銃兎はすかさず理鶯に指示して羽交い締めにさせた
｢っぐ！？離せや理鶯ッ！！｣
｢落ち着け左馬刻！ここは中王区の前なんだぞ！｣
｢貴殿のその怒りはここで出すべきでは無い。明日のバトルでぶつけるのだ｣
低く圧が込められた声に、左馬刻は舌打ちをして静まる。もう暴れないと判断した理鶯は彼を解放した
そして一郎の横を通り過ぎようとした瞬間、彼にだけ聞こえる声で囁く
｢───……まだやるか？｣
｢あぁ…｣
一郎の返事を皮切りに両者の表情が一気に険しくなる。そして一郎は怒りの表情となり衝動のままに怒鳴った
｢テメェ今何つった！！？｣
｢ハハッ、足でまといの弟のお守りを精々頑張るんだなつったンだよ｣
｢左馬刻ィッ！！！｣
｢ハッ！テメェがその気なら殺ってやンよォ！！｣
怒りの一郎に好戦的な表情で煽る左馬刻。スピーカーも出現しもう止められないと悟った銃兎は頭を抱えて溜め息を吐くしかなかった
｢ったく……どうなっても知らないぞ……｣
他のチームはどうだ？
と銃兎が顔を横に向ければ、乱数と寂雷も同タイミングでマイクを起動させていた。混ざる4人の殺意のトラック。元TDDなだけあって、トラックだけでも心臓を鷲掴みされている様な感覚がして、タラリと一筋の汗が顔を濡らした
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作者名：刹那 | 作成日時：2024年3月4日 0時
