1171話 応援に変わるモノ ページ41
理鶯は出ていった後も暫く2人を引っ張り続ける
不自然な行為、強制だったのが気に食わない左馬刻はその引っ張る手を振り払い、早朝の内廊下だろうが関係なしに怒鳴り声を上げた
「おい理鶯ッ!!テメェ何しやがる!!」
「静かにしろ。この時間は殆どの住人が寝ている」
「ですが左馬刻の怒りも納得です。何故突然我々をAさんから引き剥がしたんです?」
歩みを止めた3人は向き合い、今度は静かな言葉を交わす。怒りに満ちた紅い瞳と怪訝に揺れる翠の瞳だったが、何処か寂しさを感じられる蒼い瞳を見ると、その理由が何となく察せられた
「………貴殿らはAからの応援を欲していたのだろう?」
「っえ、えぇ…」
「たりめーだろ……」
「残念だがその言葉は彼女から聞けない」
何とか笑みを作ろうとする表情は痛々しい。自分だけじゃなく目の前の男も欲しているのに、それが叶わない事を嫌でも分からされた
理解しようとする銃兎とそれでも納得出来ない左馬刻。不満がその漏れ出す声から滲み出る
「言えないんですね……」
「チッ、変な気ィ遣うんじゃねぇよ…。別に応援の一つや二つ言っても何もねぇだろうが……」
「Aにとって重さが違うのだろう。何せ彼女は身近な存在同士が争う事自体初めてなのだ。受け入れにくい筈だ」
「私達を応援したい、しかしそれを言えば他のチームの負けを祈ってる様なモノ、なんて考えてしまうんですかね」
「アイツなら全員優勝しろとか思ってそうだわ」
「ふふ、ですね」
長年閉じ込められていたからこそ価値観が違う。それを痛感しながらも段々と表情が柔らかくなってきた3人。すると理鶯は穏やかに弧を描いていた口を開かせた
「だが小官達は応援に代わるモノを貰ったではないか」
「あぁ?」
「小官は少し形は違った。──がしかし、ふふっ、まさか自ら貴殿らに飛び付きに行くとは」
「成程…それが彼女の中で一番応援に近く、
「ハハッ、アイツ馬鹿だろ。殆ど一緒だろうが」
「理鶯は形が違うと言ってましたが何をされたんです?」
「小官の時は小官から先に抱き締めていた。すると彼女は今までで一番力強く抱き締め返してくれたのだ。恐らくその時に応援では無い応援を見つけたのだろう。ふっ、健気な事だ」
「やれやれ、それならば全力で応えるしかありませんね」
「元々勝つつもりだが、負けられねぇ理由がまた一つ増えたな」
「あぁそうだな」
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時