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1166話 焦る彼女、見切り発車の軍人 ページ36

────その頃、理鶯のベースにて。






Aは焦っていた
彼女は自身も過ごすテントの中で、落ち着かせるようにラビ君を抱きしめながら冷や汗を飛ばしていた


『あれ…!?何で、何で……!!?』


住んでいるとはいえ、潜伏中な彼のテントの中は物が少ない。精密機械があれど整理されているので広く、そんな筈は無いとAはテント内を歩き回りながら“ある物”を探していた

様子がおかしい声を外から聞いていた理鶯は、中に入り彼女に尋ねる


「A?何かあったか?」


気配も消していなければ普通の問いだ。なのにAは激しく肩を揺らして『ヒィッ!?』と短い悲鳴を上げる
そしてギシギシとオイルが切れた玩具の如くぎこちなく理鶯の方へと顔を向けた


『あ、いや……えっと…』

「捜し物か?」


その事実を隠そうとしたのか、暫く唸り声の様な音を口から出していたAだが、もう無理だとシュンとしながら頷く


『そ、そうです……』

「何を失くしたのだ?」

『え、SDカードです……』

「SDカード?」

『はい……旅行の時に使っていたSDカードの1つが何処かにいってしまって……。捜してるのに見つからないんです……』

「ふむ……物はある方では無いが、それでも見つからないとは……。小官も手伝おう」

『いえいえいえ!!これは私の落ち度ですから私だけで捜します!!理鶯さんは自分の事を優先に──』

「現在小官が優先する事は紛失物の捜索だ」

『うぐっ……じゃ、じゃあ宜しくお願いします……』











それから暫く2人はテントの中だけではなく、外や隣の精密機械だらけのテントの中まで捜したが、残念ながらSDカードが見つかる事は無かった

焚き火の前で椅子に座るAは頭を抱え項垂れている。
大切な思い出の欠片を失くしてしまったAを励ます為に、理鶯は彼女へ珈琲を淹れてあげた


「A、目的の物は見つからなかったが、きっと後に出てくる筈だ」

『うぅ……そうだと良いんですけど……っ。あぁ……珈琲が沁みます……』


チビチビと飲む姿が憐憫に思った理鶯は、何とか励まそうと珈琲を飲みながら思索に耽る


「………A、考え方を変えてみよう。SDカードは失くしたのでは無く、来るべき日の為に姿を隠したのだと」


あまりにも元気付けたい気持ちが前に来てしまったが為に、言ってる本人も何を言っているのだと冷や汗。しかし意外と効果はあったらしく、彼女は目を潤ませた顔を上げた


『来るべき日?』

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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時

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