1163話 争う事を望む連中だっているから ページ33
「あぁそうそう、この前Aさんとお泊まり会をしてね。元々一二三君と独歩君の家に泊まるっていう話だったんだけど、2人に誘われてね。有難く泊まったんだ」
「そ、そう……」
空気を和ます為なのか世間話を始めた寂雷。乱数が訝しく目を細めて聞いていれば、妙に圧を込められた笑顔を彼に向けてきた
「それでね、左馬刻君が彼女のパジャマを持ってきてくれたんだ。左馬刻君の服にそっくりなパジャマを、ね」
「ごほっ!?」
あ、これは怒ってる。
感情が込められた声に乱数は思わず噎せる。まさか面白半分で作ったパジャマがこんな形で寂雷に見られるとは……。
青い顔になりながら恐る恐る顔を窺うと、それはそれは綺麗な程に浮かべられた黒い笑み
「飴村君……。彼女の服を作ってくれるのは有難いし実際彼女も喜んでいるので良いですけど、君の悪ふざけに付き合わせてはいけないよ?」
「あっははは……。まさか寂雷に見られちゃうとは…」
「次からは悪ふざけではなく、彼女の事を思った服にデザインして下さい。君のデザインセンスは私には理解出来ないが、女性に人気だと聞いています。お願いしますよ?」
「へぇ…寂雷そう言ってくれるんだ」
「事実を述べたまでです。それに怒りで歪んでしまった固定概念で、君を否定してはいけないと学びましたから。君には私の知らない良い所がある、と」
「うぇ……何かやりずらい……」
「ふふっ、君から真実を聞くのはまだ遠いけど、それまで私はじっとしてる訳じゃないですからね。私のやり方で君を知ろうとするよ。───君自身を」
嫌いだった、その全てを見透かそうとする目。
だけど自分を───沢山いる飴村乱数じゃなく、たった一人の自分自身を知ろうとしてくれる事に嬉しさを感じた乱数。しかしそれを顔に出してはいけないと、唇を噛んで彼に忠告した
「寂雷、それは別にいいけど、あまり表立った行動は止めた方がいい。ボク達4人が争う事を望む連中だっているから」
「っ───飴村君、それは……」
「ボクが言えるのはここまで。お願いだけど、一郎と左馬刻にも伝えてくれる?ボクからは難しいからさ」
「…はい、分かりました」
悲しげに笑い頷く寂雷を見た乱数は、パクパクパクっとパフェを一気食いしてオレンジジュースで流し込む。
そしてピョンッと椅子から飛び降りて、個室を出ようとドアノブに手を掛けた
「飴村君?」
「外に出たらボク達は敵同士。昔みたいに喋れるのは今の一瞬だけ。分かった?」
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時