1162話 零れた本音、時はまだ満ちない。 ページ32
真っ直ぐで眩しい声、言葉。
いつ中王区が見ているか分からない状況。それなのに寂雷の前で、敵でなければならない相手の前で、本心が零れてしまう
「ッ……ま、まだ…ダメなんだ……っ!!寂雷ィ……ッ、」
「っ!?飴村君…!!?」
ポロポロと歪んだライトブルーから澄んだ涙が零れ落ちる。
拭っても拭っても溢れてくるソレに乱数は戸惑いながら、彼に吐露した
「ボクだって、俺だって話し合いたい……!!寂雷と……っ、皆と……!!でも────」
「……ふっ、そうですか。それならば仕方ありません。いつか言ってくれるんだね?飴村君」
いつぶりだろうか、自分に向けられる穏やかな微笑み
温かくて懐かしくて、嫌いじゃなかった顔。余計に涙が止まらなくなった乱数は、肩を大きく震わせて、エグエグと息を必死に取り込んだ
頑張って頷く──そんな彼の横に寂雷は歩み寄り、優しく背中を摩る
「約束ですよ。言ってくれないと、説教ですからね」
「うぅ……ジジイの説教長いからやだぁ……」
「ふふ、でしたら話して下さい」
徐々に落ち着きを取り戻した乱数に安心した寂雷は、元の席に戻って珈琲を飲む。ゆっくりと座った乱数に、再び尋ねた
「それで、力を貸してくれますか?」
「うん…っ!ボクに出来る事なら手を貸すよ」
「ありがとうございます」
「幻太郎と帝統にも伝えておくよ。さっきの話、2人にもしてもいい?」
「はい、宜しくお願いします」
まだぎこちないが笑顔を交し合えるようになった2人。心なしか聞こえるBGMがよく聞こえて肩の力が程よく抜けられる
乱数はスプーンを手にし、少し溶けてしまったパフェに差し込む。ストロベリーソースをよく絡ませてからパクリ。何故だが今まで食べてきた味よりも濃く感じて美味しかった
不意に視線をパフェから寂雷に移すと、感想を待っているような期待の眼差しのぶつかった。一応奢ってもらうのだから一言だけでも言っておかないと。口を尖らせながら正直に答えた
「お、美味しい……」
「ふふ、それは良かった。甘い物は飴村君の好物ですからね、気に入って頂けた様で安心したよ」
肩の力は抜く事は出来るのだが、だからといって居心地が良くなった訳では無い。今まで犬猿の仲だったのに、いきなり相手から近付いてくるとどうしたらいいのか分からない
一郎と左馬刻も含めて争うように仕向けたのが、中王区の命令で動いた自分なのだから余計に
1163話 争う事を望む連中だっているから→←1161話 君は、嫌なんだね。
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時