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1161話 君は、嫌なんだね。 ページ31

暫く経つとオレンジジュースとパフェ、珈琲が届く。
重苦しい空気の中、店員が出ていって完全に離れた事を気配で確認した後に、寂雷の口が重々しく開かれる


「今回飴村君に来てもらったのは先程も言った通り、Aさんの近況を報告する為です。最近彼女に変化がありましたから」

「お前分かってるのか?何で俺なんかに……」


飴村乱数(中王区の駒)”を演じる必要が無い彼は、本来の彼で喋る。
その様子を見た寂雷の目が細くなった


「えぇ、命懸けでAさんを護ってくれた君だから話さなければなりません」

「っ、アイツ……喋ったのかよ…」

「はい。そのおかげで私は君の事を誤解していると気付けました」

「は…?」

「その話は後で詳しくさせて下さい。先ずはAさんの事です」


ライトブルーの瞳が真ん丸になって見られている中、寂雷は淡々と口を動かした。
人間のエゴに振り回された彼女は、その本質まで優しく純白な存在だった。不幸な人生のみかと思われたが、しっかりと愛され育てられていた、と。そして彼女に最後まで寄り添っていた人物──博士は、放っておくと彼女に被害をもたらしてしまう、とも。


語られる内容より、自分に語る事自体が受け入れられない乱数は、眉間に皺を寄せる。


「───これで以上です」

「で?それを話してボクはどーしたらいいの」

「協力して欲しいんです」

「……はっ?」

「そう遠くない日、博士は何か大きい事件を起こす筈です。それはきっと私や左馬刻君達が力を合わせても太刀打ち出来ない可能性がある。だからこそ、君の力も貸して欲しいんです。君だけじゃない、夢野先生や有栖川君にも力を借りたい」


ダァンッ!!!とテーブルを叩く音が強く鳴った


それは乱数が怒りのままに起こした音。



「はぁ!?何勝手に巻き込もうとしてるんだ!!お前、俺が何したか忘れたのかッ!!?」

「忘れていません」

「だったら俺は除くべきだろ!!またお前の大切な奴を奪ってもいいのか!!」


感情のままに叫ぶ乱数だが、寂雷は捉えていた。怒りではなく、恐怖で揺れる瞳を、震える手を

得られた情報で導き出した答えに寂雷は安堵の息を吐き、穏やかに目を細めた


「君は、嫌なんだね。自分で壊してしまうのが」

「っ……Aに、何か、言われたのか…?」

「いいえ。因みにですが今回話そうと思ったのも、彼女の助言ではなく私の意思です」

「えっ……?」

「─────私達は話し合うべきだ、飴村君」

1162話 零れた本音、時はまだ満ちない。→←1160話 彼と向き合う寂雷



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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時

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