1160話 彼と向き合う寂雷 ページ30
────同刻。
寂雷はシブヤにてとあるカフェに来ていた。
そこは珍しい“プライベートな空間を全力で楽しめる”というコンセプトの基、防音対策がしっかりとされている個室のみのカフェ
大きさにして7m、高さ5mのアンティーク調な個室。落ち着くBGMがさりげなく流れる此処は、金額もそこそこするが、友達と楽しく話したりするには持ってこいの店だ。
────と言っても、寂雷はこの後来る人物と楽しく話をするかと言われれば微妙であるが
個室の唯一の出入口であるドアが開けられる
その瞬間に寂雷の表情が強ばるが、相手の表情を見るなり思わず和らいでしまった
「ふふ、そんなに嫌そうな顔なのに来てくれたんですね。────飴村君」
「だって…珍しくジジイからの呼び出しなんだから、裏があると思うじゃん……」
いつものキラキラした笑顔は面影もなく、皺を寄せて険しくなっている乱数。彼は嫌悪感を隠さないままに部屋に入り、寂雷と向かい合うように椅子に座った
本題に入る前に、寂雷はテーブルの上にあるメニュー表となっているタブレットを乱数に渡す
「調べたところ、ここのストロベリーパフェが人気らしいですよ」
「じゃあジジイの奢りね。あとオレンジジュースも追加で」
彼の一つ一つの言動に目くじらを立ててしまう寂雷だったが、Aから聞いた話のおかげである程度我慢出来るようになった。我儘な態度でも「分かりました」とだけ応えてタブレットを受け取る。そして自身が飲む珈琲もタップし、注文した
寂雷がタブレットを充電器に差したのを確認した乱数は、頬杖をついて不貞腐れながら口を開いた
「それで?何でボクを呼んだの?」
「詳しい話は料理が届いてからにしましょう。Aさんの事なので」
鋭い声に乱数の表情はより険しくなる
「何か、あったの?」
「安心して下さい。彼女の近況を共有したいだけです」
寂雷の言葉に今度は目を見開かせた。
あの寂雷が自分に、大切であろう人の情報を自分に共有してくる。その事実が信じられず、頬杖を止めて背筋を伸ばした
「何を……企んでる?」
「ですから、その話は料理が届いてからです」
全てを見透かしているような態度が昔から気に食わない乱数。態とらしく舌打ちを響かせて腕を組んだ。
そんな態度にも動じない寂雷の目は、変わらず鋭い目で乱数を深く観察していた
本当にAの口から語られた彼が本当なのか、と。
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時