1158話 頼り頼られ支え合う家族 ページ28
本来の目的を達成した左馬刻は「じゃ、俺様帰るわ」と背中を見せた。しかし直ぐに呼び止めたのは一郎
「左馬刻」
「どーした?あ、悪ぃ茶ァ零したな」
「いや、それは後で俺が片付ける」
「じゃあなんだよ」
訝しげに眇めると、一郎は変わらず芯のある声で尋ねた
「合歓ちゃんの事も調べていいか?」
「合歓…?」
「何で合歓ちゃんが俺らの仲を壊すようなこと言ったのか、今何処にいるのか。俺も知りたいんだ!」
真っ直ぐと見てくる赤と緑の瞳。
もう疑う余地がなかった左馬刻は、表情を和らげて頷いた。だが後に真剣な面持ちになり、忠告する
「だがこれは絶対ェ中王区が絡んでやがる。弟がまた人質に取られてもいいのか?」
「っ……」
突きつけられた言葉に臆してしまった一郎。そんな彼の横に並んだのは、護ろうとしていた二郎と三郎だった
「大丈夫だよ兄ちゃん!俺達、ブクロの代表になれるくらい強くなったんだ!もう誰かに攫われる事なんてないよ!」
「そうです!そんな人の家族を奪ってくるような卑劣な組織に負けません!」
「二郎、三郎……」
───昔はあんなに愛してても嫌われ、悩み続けた一郎が…。
目の前の光景に左馬刻は過去を見ていた。
必死に家族の為に手を汚して、その分弟達には嫌われて。笑い合う事すら少なかった3人なのに、今では頼り頼られ支え合う家族として成り立っていた
良かったな、と思う反面、自分が切り捨てた所為で頼る人がまたいなくなって独りで護ろうとしてたんだな、と胸の中で痛みが走る
それを隠し、優しく口角を上げた
「それなら安心だな。頼むわ」
「っ、あぁ!!」
「…………悪ぃな、一郎」
「…いや、俺も悪かった」
「───俺達は勝手に決めつけて話し合えてなかった」
「でももう違う、やっと理解し合えた」
一郎はそう言うと左馬刻の前に手を出した。
迷いのない表情。差し伸べられた手に目を見開いた左馬刻だが、表情を綻ばせてその手を握った
「だがDRBでは容赦しねぇぞ?」
「当たり前だ。俺と二郎と三郎で、アンタらMTCを倒す」
「絶対負けねぇかんな!!」
「ヤクザだろうが警官だろうが軍人だろうがそんなの関係ない!!勝つのは僕達だ!」
「ははっ、言ってろ。どンだけ吠えてようが、勝つのは俺らMTCだ」
挑発的な笑みを交わした左馬刻は、背を向けて玄関へ歩いていく。見送る為に一郎達も後ろに着いて行く
「じゃあな一郎、DRB待ってンぜ」
「あぁ、アンタとのバトル楽しみにしてる」
1159話 趣味の話だと饒舌過ぎる→←1157話 もうアンタの事を“左馬刻さん”なんて呼ばねぇ
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時