1148話 力を合わせるべきだ ページ18
────暫く経てば、銃兎と理鶯はそれぞれの家へと帰っていく。左馬刻もパジャマを態々届けに来れば、直ぐに家に帰っていった
シンジュクとヨコハマじゃ簡単に往復出来る距離では無い。それなのにも関わらず、Aの為になら行動を起こす左馬刻は優しい。────否、自身の家にあるパジャマを着させる事で独占欲を見せつけているだけだ
それを証拠に────
『はわわわ……っ、さ、左馬刻さん何故これなんですか……!?』
「うわぁ……優しいって思ったけど、やっぱ左馬ちんだわぁ……」
「これオーダーメイド?」
『乱数さんが作ってくれたんですけど……オーダーメイド、なんですかね……?』
「飴村君……」
寂雷もお泊まりセットを持って帰ってきた頃、先ずはAがお風呂に入ろうという流れになったので、彼女は左馬刻が持ってきた大きめの鞄の中に入っていたパジャマを取り出した。
凄く見た事のある配色、模様。
綺麗に畳まれていたソレを見た瞬間に、Aの耳が真っ赤に染まる。異変に気付いた3人が興味本位で覗けば、ひらりと広げられたパジャマにドン引きの表情
乱数の悪戯といっても過言では無い、左馬刻の服に似た──通称擬似的彼シャツパジャマ。
敢えてこれを持ってきた左馬刻は、心が狭いのか広いのか
麻天狼の頭の中には、ケラケラと楽しみながら笑う乱数が思い浮かんだ。そういう彼の一面を知っている寂雷は、深く溜息を吐いてAの肩に手を置く
「Aさん、君はもう少し相手の意見を否定する力をつけた方がいい。このままでは、飴村君の着せ替え人形になってしまう」
『うぅ……』
「彼の服のセンスは独創的ですが、普段の物は芸術を楽しむ様な明るい印象を感じます。なのにこれは完全に悪ふざけです……」
『で、ですかね……?』
「はぁ……今度会う時に説教ですね……」
自然と零れ落ちた言葉
その言葉の意味は、いつか寂雷は乱数に会うという事。それを知ったAは目を大きく開かせ、嬉しそうに前のめりになって寂雷へ尋ねた
『乱数さんに会う予定あるんですか…!!?』
叱られて萎れていた様子から一変、水を貰って復活した花の様な輝きを持つ表情に一瞬は圧倒された寂雷だが、釣られて笑顔となりゆっくりと頷いた
「はい、我々の勝手な判断ですが、Aさんの情報を共有しようと考えていてね」
『わ、私の…ですか?』
「力を合わせるべきだ、そう感じたんです。何としても、君を護りたいからね」
『寂雷…さん……っ』
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時