1146話 はどぅけ─── ページ16
マイナーと言われている割には知られていたアニメ。失っていた記憶の一部がこうして皆の中にあり、途切れる事無く会話が続く様子にAは胸が擽ったい感覚になりながら見守る
楽しかった思い出は、モノは、実際にあったんだ、と
｢ねぇねぇAちゃん、他にも思い出聞かせてくんね？意外と俺らの知ってる事あるかもしれないしさ！｣
｢その博士はアニメが好きなンだろ？なら一郎経由で聞いてるし、分かるかもな｣
突然全員の顔がAへと向けられる。
今までは彼女の過去は全て暗いモノだった。しかしオートマタとなる前は幸せで楽しい日々。それを語る彼女の表情があまりにも活き活きしていて、楽しそうに語るものだから全員が気になったのだ
一二三の言葉に対し満面の笑みで頷いたAは、どれを語ろうかと埃を被った宝箱を開けるように思い出を言葉に乗せた
『確か博士はガンプラ？が好きでした！良く部屋で作って私に見せてくれました！基本的にロボットか好きだった記憶です！』
｢あー、それも聞いた気がするわ。涙流して気分が沈んでた一郎を心配して声をかけたら、なんとかガンダムがどーのこーのでよく分からねぇがそれがショックとかなんとか｣
｢ブハハッ、ちゃんイチって泣き過ぎじゃね？｣
｢ふふ、一郎君は感受性豊かですから｣
｢何だか博士さんと一郎君が喋ったら盛り上がりそうだな……｣
｢聞いている限り好みは似ているようだ｣
『そうなんですか？───あ………』
自分の記憶の中じゃ彼からオタクの様な素振りを見た事は無い。そう振り返れば1回だけあった。自分がゲームのCMで“波動拳”を打とうとした動画をやたらと共感していた。
腑に落ちた反面、恥ずかしさで忘れようとしていた黒歴史を開けてしまい、自然と顔が熱くなって声も漏れてしまう
そのまま無かった事にして話を進めよう。Aは代わりの言葉を出そうとしたが、
｢あん時の動画、一郎欲しがってたろ？｣
《はどぅけ──》
『ギャアアアッ！！！』
何というデジャブ
萬屋ヤマダで響いた叫び声が一二三独歩宅に爆発。今回は途中で掻き消されたが、あくまでも途中だ。しっかりと最初は全員の耳に届いてしまい、叫び声に続いたのは盛大な6人の笑い声だった
｢ブォハハハッ！Aちゃん何してんのっ？｣
｢ハハハッ！ご、ごめんっ、これは笑うよ｣
｢く、ふふっ、だ、ダメ……ッ｣
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作者名：刹那 | 作成日時：2024年3月4日 0時
