1143話 一生懸命に話す彼女 ページ13
「ダァーハハッ!お前何つー掛け声で応援してんだよっ」
「くっ…ふふっ、Aさんらしい所でもありますけどね……ふはっ、」
「バットを振れなくなってしまった時点で本末転倒だが、中々に良い映像だ」
「とても可愛らしいですね。無邪気さがとても伝わるよ」
『あぁー!見ないで下さいぃー!!』
晩御飯を食べながら土産話を始めた一二三と独歩。先ずはずっと言いたかったA流エールを動画と共に話す。2人の予想通り全員のウケは良く、様々な感情が籠った声が響き渡る
1対6の状態じゃスマホを奪う事は叶わない。Aは両手で顔を覆い、叫ぶ事しか出来なかった。そして見える肌はとても赤い
「おい観音坂、その動画送れや」
「既に送りました」
「早ェな」
『いつの間に!?』
「本当ですねぇ。安心して下さいAさん、悪用はしません」
『不安でしかない!!』
「他にも何か話か動画はあるだろうか?」
『動画を貰おうとしないで下さい!!』
「ザンネンだけどもう動画はないんだよなー。でも大事な話があって───」
一二三は金色の瞳に優しい光を宿してAを見やる。応援の意味も含まれた視線にAの体は少し強ばるが、隣の温かな光を反射させた青緑の瞳と合い、決意に満ちた目で4人と向き合った
『あ、あの……っ、私、記憶が少し戻って……』
決意が固まったとしても、それを言語化するのは難しい。汗を飛ばす勢いで必死に喋る彼女に、4人は目を丸くしつつも口を挟まず心の中で応援して静かに言葉を待つ
『えっと…漸く自分を取り戻した様な気がして……。あっでも、朝の失礼な言動は許されるモノじゃありません……本当すみませんでした…ッ!!』
言いたい事の順序は纏まっていない。
それ故にごちゃごちゃしているが、全員苛立つ色なんて無く穏やかな表情で頷いている
『そ、それで………思い出した事を言おうと思うんですけど、何から話せばいいのか…!!』
必死な姿が愛らしい。
内容も表情も真剣な彼女なのでその様な感情は失礼な部類なのだが、どう頑張っても最後にはそこに辿り着いてしまう。
邪念を唾と共に飲み込んだ寂雷が、上手く話を進められる様に助け舟を出してあげた
「先ずは思い出したきっかけから話すのはどうでしょうか?私としても、貴女の記憶を戻す手助けをしたいので情報があると有難いです」
『成程…!!えっとですね、フードコートで一二三さんの握手会をしてた時に──』
「待て待て途中経過寄越せや!?」
1144話 それでも話すのが下手な彼女→←1142話 朝のマウント返し
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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時