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1132話 また会いたいからさようなら ページ2

「懐かしいねェ……」

『……?』


一二三と独歩とは面識が無い筈だ。なのに彼は懐かしむように呟いた。首を傾げたAは後を追う様に視線を2人へ向ける

ニコニコと華やかな笑顔で仔猫ちゃん達と握手をし続ける一二三、スマホで時間を計ってフェアに引き剥がしていく独歩。中には反抗して自分だけ少しでも長く握手しようと奮闘する女性もいるが、それを独歩を含め周りが無理やり引っ張ったりしてとても騒がしい


『───ッ、』


頭に痛みが走る


それは電気のような、鈍器で殴られたような。否、温かくて柔らかい羽根が彼女を包み込む様な衝撃






────“テメェ今何つったァ!?”

“その歳でアニメとか恥ずかしいだろうが!”

“ざけんじゃねぇアニメ漫画舐めんじゃねぇよ!!最近のスゲェからな!?それならゲームで盛り上がるテメェも同レベだろうが!!”

“あぁ!!?ゲームは別だろうが!”

“一緒だわ!!本来手を取り合う仲だろうが!!”

“センパーイ!!Aちゃんの前で子供みたいに喧嘩しないで下さいっす!!”

“離せ後輩!!コイツはアニメをバカにしやがった!!全世界のアニメ制作会社や声優その他関係者に謝りやがれェ!!”

“ハッハッハッ、ホント下らねぇなぁお前ら。そう思うだろA?”

“ぱぱ楽しそう”

“パパじゃねぇッ!!”






────あぁ、そうだ。
こうして取っ組み合ったり、止めに入ったり周りが見て笑ってたり、似た光景を昔に見た事がある。
今回はモザイクがない。鮮明だ。この記憶には確信が持てる

3回瞬きをしたAは、嬉しそうに小さく息を吐いてやっさんへ顔を向けた


『うん…。よくパパは他の人と仲良く喧嘩してた…』

「っ!?A!?お前さん、記憶が……」


腹の底が読めない雰囲気だった彼は、声を張らせAの両肩を掴んだ。サングラス奥の瞳は丸くなり、信じられないと言いたげに震えていた
その異なる色の瞳に反射するのは、目を細め何処か切なげに首を横に振ったA


『全部じゃない……でも、覚えてる……』

「っ……そ、うか……」

『やっさん……。私……またやっさんに会いたいから、さよならする……』


それは過去に自分が言った言葉。さよならするのが嫌だとぐずる彼女へ向けた屁理屈。もう映像でしか見れないと思っていたソレに、彼は声を震わせ優しく、優しくAを抱き締めた


「あぁそうだな……俺もまたお前さんに会いてぇからよ、ちゃんとさよならしねぇとな……」

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作者名:刹那 | 作成日時:2024年3月4日 0時

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