1040話 走る痛み、悲しそうな彼 ページ10
話は一応丸く収まったのだが、未だに銃兎はAを離さない。銃兎さんらしくない、とAは戸惑いつつ大人しく彼の中に収まっていると、退紅はゆっくり立ち上がり部屋を出ようと背を向けた
「俺ァちょっと物を取ってくるから待ってろ。そんな時間は掛んねぇよ。神崎、額繋、お前らも着いてこい」
「分かりました…!」
それだけを言い残し、3人はパタリと戸を閉めて何処かへ行く
残された4人。本来なら何事も起こらず安堵の雰囲気で包まれる筈が、重苦しい空気が漂っている。溜まる唾を飲み込み、恐る恐るAが声を発した
『あ、あの……み、皆さん……?』
どうしました?と続く筈だった言葉は、理鶯の何かしらの感情が抑え込まれた声によって遮られる
「銃兎、もうAに危険が及ぶ事は無い。安心しろ」
「っ…そ、そうですか……」
疑心暗鬼となっているのか、理鶯の言葉でもすんなり受け入れられない銃兎。怖々と時間を掛けて離れた彼の顔はやはり不安げだ。
自分の行いで悲しませてしまったと解釈したAは、謝らなければという結論に至る。しかしその行動は、理鶯によって再び遮られる事になった
「A」
『は、はい!』
銃兎が離れ、目の前に立ったのは理鶯。ただでさえ身長差があるのに、座っているAと立っている理鶯。余計に理鶯からのプレッシャーが凄まじく、声を裏返しながら彼女は返事をした
理鶯が照明を背にしている事で逆光になり表情が上手く見えず、声も心做しか冷たい
「歯を食いしばれ」
『えっ』
突然何を……と聞きたかったが、目の前の男はそれを最後に何も言わない。圧だけで“命令に従え”と訴える。何が何だか理解が出来ない彼女。しかし従わざるを得ないので言われた通りに歯を食いしばる─────
──────パシンッ、
冷たく乾いた音が鳴った。
それが自分の頬から鳴ったモノだとAは理解するのに酷く時間が掛かった。ジンジンと主張をし始める痛み。頬の痛みだけな筈が、胸まで痛む。纏まらない思考で固まる事数秒、漸く頬を叩かれたのだと赤くなってきた左頬に手を当てた
『え…』
「理鶯……」
Aの代わりの様に左馬刻がポツリと名を呟く。庇う訳でも怒る訳でも無い。ただ何方の気持ちも汲み取った結果、零れてしまった声
「何故叩かれたか分かるか?」
Aの視界では逆光で薄暗く見える理鶯の顔。それはいつもの彼らしくない、悲しみを滲ませた表情だった
1041話 理解不能、理解不能。→←1039話 泣かせんじゃねぇぞ
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刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時