1075話 何も変哲も無かった旅行の頃の彼女。 ページ45
「あ?どういう事だ?」
寂雷の説明に先ず反応したのは左馬刻。淡々と並べられる言葉に着いて来れなかった彼は、眉を顰めて詳しい説明を促す
「最初のAさんを思い出して下さい。何も外を知らず、初めて会った男と共に行動していました」
「それはその男の願望に沿った行動、ではないんですか?」
「そうとも捉えられますが、後に彼女は自ら過ちを知り男の命令に背きました。その時点でこのデータの矛盾が生じます」
「っ、確かにそうだな……。ならコイツはデタラメだったっつー事か?」
「いえ、そうとは言いきれません。まだ彼女は常識を知らなかった。だから相手に合わせる事が出来なかった」
「………では、外を知り常識を学んだ事で、埋め込まれた思考が働く様になり自我が抑えられたのだろうか」
「その線が濃厚ですね。人間のエゴで改造された子が、他人を恨まず優しくなれたのはそのおかげかもしれません」
「………チッ、なら結局分からねぇままじゃねぇか。このデータが本当かどうかよ」
頭をガシガシ掻きむしり苛立ちを露わにする左馬刻に、寂雷は視線を向ける。完全に推測だ。だが可能性はある。そんな迷いがありながら、少しの望みを込めて口を開かせた
「彼女本心、それを出す方法があるかもしれません」
「っ!?本当かセンセー!?」
「この事から、記憶の改竄で影響がでたのは
「…本能では無く理性……?」
「本能でその性格になっていたのなら、男の命令に背きません。ましてや、病院の屋上であの様な怒鳴り声を上げない筈です」
「本能とは経験、学習を経ずに動物が先天的に持つ行動原理。つまり本能に影響があれば、その行動はおかしいという事か」
「はい。一方で理性は学習を重ね、道理的に判断し本能を抑える。その理性が都合良く調整されているならば辻褄が合います」
医学的知識が無い左馬刻と銃兎は、険しい表情で内容を理解しようとするが、ショートしてしまい2人の話に入れない。だが寂雷の言葉が正しいのなら、Aの本心が見れる可能性がある事だけは分かり、その方法を話す様に催促した
「じゃあどうしたら本心が出るンだ!?」
「理性を抑え込む、それが今私が考えられる方法───」
真剣な面持ちだった寂雷はここで漸く穏やかな表情へと綻ばせる
「この前の旅行覚えてますか?お酒を飲んで甘えん坊になっていた彼女。恐らくそれが理性が少し抑えられた彼女です」
1076話 見つけた“否定”手段→←1074話 “否定”を探しに。
36人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時