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1035話 左馬刻が入れ込んでいる女 ページ5

耳に当たるのは退紅の笑い声。

逆上されるよりは幾分かマシなのだが、人の覚悟を笑うのは……。安堵様な驚きの様な、複雑な気分のAは顔を顰めて彼を見やる


「お前さんの覚悟はこの耳でしっかりと聞いた。なら安心だな」


ひとしきり笑った退紅は、薬を掴むなりそのまま流れる様に部屋の隅のゴミ箱に投げ入れた


(えっ、ナイスコントロール過ぎ!?いやいやそんな事はどうでもいい、えぇ!?あれ、捨てちゃって大丈夫なの!!?)


自身に渡そうとした物が、一般家庭にあるサイズのゴミ箱へ躊躇いも無く捨てた事により、Aの思考は乱れ状況処理が追い付かなくなってしまう
完全に顔に出てしまっている彼女は、分かり易い程にアワアワしてゴミ箱と退紅を交互に見ていた。そんな彼女が可愛らしく面白いと、退紅は笑顔を崩さずに言葉を続ける


「すまねぇな。ちぃとばかし、お前を試したんだよ」

『た、試した……?』


ずっと自分は試されてる気が……。
そんな言葉を飲み込みオウム返しをすると、退紅は真剣な面持ちとなり重々しく頷いた


「あぁ。左馬刻は火貂組の若頭、それは分かってんな?」

『は、はい!勿論』

「それに一昔前はTDDのメンバーで今はMTCのリーダー。そんな有名人に言い寄る女なんざごまんといる」


退紅の言い方は、まるで自分が左馬刻の肩書きに惚れた様な認識をされている。心外だと言わんばかりに顔をムッとするが、言葉は挟まない


「大抵の女なら左馬刻は相手にしねぇが、あんな溺愛ぶりだ。きっと今までの女と違ぇんだなって思ったんだよ」


ニヤリ、と笑みを浮かべながらAを見る瞳は、彼女の中まで見透かそうとする程に鋭い。自分は違うぞ、と主張する為にAも対抗して睨む


「だからお前をここに呼んだ。左馬刻の大切な奴がどれ程の芯を持ってるか確かめる為にな」

『芯、ですか?』

「若頭が入れ込んでる女なんだ。言わばお前はアイツのアキレス腱。弱点になり得る」

『そう、ですよね』


左馬刻は強い。それは殆どの人物の共通認識。しかし職業柄逆恨みをしてくる輩は沢山いる。左馬刻には勝てない、ならどうすべきか。彼の弱点を突く他ない──つまり、人質

簡単な方程式はAの頭でも作れた。漸く彼の真意が理解出来たAは、自分の立ち位置を改めて実感する


『左馬刻さん相手に勝ち目が無いなら、必然的に私に矛先が向かれますね』

「そういうこった。理解が早くて助かるぜ」

1036話 火貂退紅の昔話→←1034話 寂しさは証拠



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刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時

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