1068話 知られてはいけないモノ。 ページ38
─────野営地内、テントの中。
太陽の光すら遮るテントの中で、無機質なタイピング音が響く。そこはランタンが包み込む様に照らし、作業する男の視界を手伝っていた
ユラユラと揺れる温かなオレンジ色の光だが、照らされる彼の顔は険しい。作業が進めば進む程歪み、彼にしては珍しく下唇を噛んでいた
「…………ダメか…。いや、まだ他にフォルダがある筈だ……」
零れる声色は、焦燥感が滲み出ていた。
Aは知らない。理鶯はDRBの予選の中、ずっとこうしてパソコンと向き合いプログラムの解析、クラッキングを行っていた
それはまだAに見せてはいけないモノ。そして仲間にも。本来彼女がいるのであれば控えるべき行動だが、段々と得られる情報に焦り、それを
〜♪
「───ッ!!?」
集中をしていた理鶯は突如鳴った着信音に思考が乱れる。それは他でもないAなのだが、画面を確認する前の彼は思わず舌打ちをしてしまう
後にAと分かれば目を見開き、申し訳なさそうに息を吐いて穏やかな表情に変わった
「Aか?どうした?」
《えっと…理鶯さん……お恥ずかしながら罠に引っ掛かりまして……。助けて欲しいんです……》
「何!?それは何処だ!?」
《ベースから北に歩いて数分の所ですね……。網に包まれちゃって…えへへ…すみません……》
「了解した。直ぐに救助に向かう」
理鶯の罠には様々な種類がある。擦り傷で済む優しいモノから致命傷になる程の危険なモノまで。
思う様に情報を得られなかった理鶯は、思考が纏まらないまま彼女の状況を聞かずに通話を切ってしまった。焦りも抑えられず、必要な装備や救急セットを手にし、罠に掛かったAがいるという北へと駆け出した
今の彼は、常に冷静な判断を強いられる軍人とは掛け離れた精神状態だった。その証拠に───
───────プログラム解析をしているパソコンが点いている事に気付いていない
「理鶯、居ねぇのか?」
「Aさんも居ませんね……。焚き火も消えてますし、テントにも居ないのなら出かけてるのでしょうか……」
「ったく、漸く手が空いたから来たってのによ……」
「アポ無しですから仕方ありませんよ。………おや?理鶯にしては珍しくパソコンが─────ッ!!!?お、おい左馬刻ッ!!!」
「あぁ?ンだよ銃───…………ッ!?おい……何だよコレッ!!?」
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刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時